コラム・エッセイ
(6)鬼胡桃(オニグルミ)(周南市大字徳山)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
明治30年、山陽鉄道の開通によって終着駅となった徳山は、九州への渡航客などが急増し大繁栄をする。しかし、その後、山陽鉄道が延長され通過駅となると、一転不景気に襲われる。
不況の対策として海軍煉炭製造所の誘致が進められた結果、用水の確保が絶対条件となった。そこで用水を八窪(はちくぼ)全体、城山後指定地から供給するとした「用水決議」がなされた。
八窪は興元寺のすぐそばを流れる栄谷川の支流で、かんがい用水として興元寺周辺の高台の耕作地で利用されていた。全水量を供給するとなれば、耕作を断念する必要に迫られたであろう。
そこがどのような場所であったかを確認するため、八窪川の渓流に沿って伸びる山道に入ってみた。すぐに、上部を走る山陽自動車道の巨大な橋脚が現れる。補強のためか渓流までもがコンクリートで固められている。
最近では、この山道を通る人も居なくなったのだろう、イバラとクモの巣にしつこく行く手を阻まれた。やむなく、手がかりも掴めないまま荒れた道を、取水口のある場所まで引き返した。
海軍煉炭製造所は、その後大正10年に海軍燃料廠と改称し、昭和20年に米軍の空襲により壊滅するまで続いた。
興元寺橋の欄干のそばに、鬼胡桃の木が生えていた。伸びた枝には数個のクルミの実が付いていたが、川底の深いこの周辺でクルミの実を取るのは非常に危険である。
河川の近くに自生しているので、他の安全な場所を探すことをお勧めしたい。また、青い実に直接触れると皮膚炎を起こしやすいので注意が必要である。
