コラム・エッセイ
(7)野菊(光市小周防)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
光市小周防の小野橋入口横にある広場には、自然石に彫られた「小野小町の碑」と小野地区に小野小町の墓があったという言伝えなどを記した「小野小町の碑の由来」の説明板が建っている。
その広場から信号機のある横断歩道を渡り、民家の横から奥に進む。入口は分かりにくいが、参道とは直接関係はないと地元の人から聞いた道路脇の石仏が目印となる。
突き当りを直角に曲がると、竹やぶの中に参道の石段が見えてくる。その石段は、聞いていた通り道路沿いの民家の屋根に向って傾いている。注意深く登ると石段は意外に短く、すぐに境内に到着する。
正面には神社(瑜伽社)があり、横には小堂がある。小堂の両脇に「小野の乳観音」と記された赤いのぼり旗が立っているので、ここが乳観音(ちちかんのん)であることが分かる。
内部の壁面には乳房の形をした古い奉納物と共に、「小野の乳観音さまの由来」の古い額が掛けられている。由来には『防長風土注進案』に記された「婦人乳汁少なき者、堂前の溝さらえ祈念すれば乳汁沢山に出、稚子成長する」などが引用されている。
堂の前に溝が見当たらないのは、古くは新宮の真行寺の側にあったとされているからであろう。その後どの様な経過でこの地に移されたのかは定かではない。
「世に隠れなき事」と記されているほど霊験あらたかであったことからすれば、多くの参拝者があったに違いない。現在の様子は不明であるが、行き届いた手入れに感謝したい。
参道や県道沿いの広場では、野菊の花が時折り吹き過ぎる秋風に小さく揺れていた。
