2026年07月15日(水)

コラム・エッセイ

(3)ずくし(熟柿)

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 今年は、柿が豊作であった。いたるところで、たわわに実った柿の木を目にした。晩秋にふさわしいとも言えるその風景をみると、なぜか、みんなが貧しかった時代の子供のころを思い出す。

 今では、そのほとんどが収穫されることもなく熟れて落ちる柿の実も、当時は貴重な食料でありオヤツであった。最後の一個は鳥に残すように言われても、その一個ですら欲しくてたまらなかった。

 そんな体験からかもしれないが、柿の木に残された赤い実を目にすると無性に切なくなる。何が解決するわけでもないだろうが、せめて実家に実った渋柿だけでもと収穫に励んでいる。

 収穫した渋柿は、渋抜きをする必要がある。今となっては難しいが、かって五右衛門風呂があったころには、柿を入れたポリ袋を風呂の残り湯に一晩中つけることによって渋抜きをしていた。

 その他にも、アルコール(焼酎)を利用する方法などがある中で、特に古くから行われているのが干し柿であろう。民家の軒先に並べられた干し柿が、季節の風物詩となっていたころが懐かしい。

 しかし、だれが何と言っても、最高においしいのは、「ずくし」に違いない。扱いにくさから決して店頭に並ぶことはないが、自然に熟すことによって渋が抜けた甘さは格別と言うべきであろう。

 小さい頃から何度も口にしたことのある「ずくし」と言う言葉であるが、どうやら方言らしい。新南陽市の『生活とことば』には、「ずくし」について「柿の実の熟したもの」との説明がある。

 おそらく、「じゅくし(熟柿)」が訛ったものと思われるが、今さら方言と言われても困ると感じるのは、残念ながら、柿の本当の美味しさと大切さを知っているであろう年代に限られるのかもしれない。

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