2026年07月15日(水)

コラム・エッセイ

(13) カワセミ(翡翠)

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 カワセミを見つけることは難しい。その理由として、シラサギやカモと違ってスズメほどの小形であることがあげられる。そのうえ、警戒心が非常に強く、近づくとすぐに逃げ去るからでもある。

 しかし、野鳥に特に興味がない人であっても、漢字表記である「翡翠」を見るとカワセミが持っている特別な意味に気づくはずである。それは、漢字表記が宝石の「ヒスイ」と同じだからである。

 ヒスイについて『広辞苑』(岩波書店)で調べてみると「カワセミの異称。雄を「翡」、雌を「翠」という」、さらに「カワセミの羽の色のように美しくつややかなもののたとえ」と書かれている。

 これを読むと、まさに「目から鱗が落ちる」ような気がする。ヒスイの輝きの美しさにため息をつくまでもなく、本家本元の美しさは川辺を飛び回っているカワセミが持っているということになる。

 そのことを知っているかどうかは別にしても、一度その姿を目の当たりにすると、その美しさに心を奪われることは間違いないと言えるであろう。ところが、カワセミはそう簡単に姿を見せてはくれない。

 もしかしたら、執着しないように一定の距離が保たれているのかもしれない。宝石の輝きに目がくらんだかのように、夢中になって追い求めたところで、決して満たされないことを教えているのだろうか。

 それでも、カワセミがエサを取るところは必見と言える。木の枝や土手の上から慎重に獲物を狙い、水中に向かって一気に突進する姿は、必ずしも成功するとは限らないが、迫力にあふれている。

 カワセミの異名としてソニドリ(鴗鳥・翠鳥)がある。そのソニが訛ってセミになったとする説もあるが、俗説として背中が美しいという意味のセミ(背美)もある。このほうが、鳥名の由来としては馴染みやすい。

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