コラム・エッセイ
(37)ミヤマクワガタ
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
山のすぐ近くに住んでいるからであろうか、いろいろなものが家にやって来る。そのほとんどが招(まね)かれざる客といえるが、そのなかでも特に来ないでほしいと願っているものがムカデ(百足)である。
不快ではあるが、家の周りにいることは仕方ないとしても、家の中に侵入することだけは許したくはない。あらゆる手段を講じて侵入を阻止したいところであるが、知らないうちにどこからともなく入ってくる。
その姿を見るだけでも気持ちが悪くなるが、さらに咬まれると激しい痛みや腫れに襲われる。壁や天井だけでなく、衣服やタオル、靴や長靴などありとあらゆるところに潜んでいるので油断もすきもない。
そのほかにも招かれざる客は多くいる。ようやく眠りについたころに、耳元でか細い不協和音を奏でる犯人の蚊もそうであろう。取れそうでいて取れない犯人の巧みさに対する苛立ちが眠気を奪っていく。
全窓に網戸を張り巡らした完璧な守りをかいくぐってくるほどの強者には、昔のように蚊帳(かや)を張るのが一番の対策かもしれないが、今は蚊取り線香や虫よけスプレーで対抗するしかないのであろう。
決して忘れてはならない招かれざる客が蜂である。この客こそが一番厄介と言えるかもしれない。実害ということでは他を圧倒している。アシナガバチ、スズメバチ、ドロバチなど、まさに最強の敵である。
ところが、ある朝、招かれざる客ではなく招きたい客がやってきた。大歓迎をした客の正体は、なんとクワガタムシであった。夜の明かりに誘われてやってきたまま帰ることができなくなったのであろうか。
子供の頃、昆虫の王様といえばカブトムシであった。頭部から突き出た巨大なツノの迫力にかなうものは他にはいない。それにもかかわらず、人気が高かったのがクワガタムシであったことを思い出した。(画家)
