コラム・エッセイ
ヤブキリ
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)ヤブキリという名前について調べてみたところ、バッタ目キリギリス科の昆虫であることが分かった。さらに、ヤブキリという名前は、藪に棲むキリギリスを意味していることから、それが省略されたものであろうか。
しかし、ヤブキリは藪だけに棲んでいるわけでは決してない。余りにも大ざっぱ過ぎる名前のつけ方に疑問を感じざるを得ないが、これ以上に最適と思える妙案があるわけではなく、とりあえず認めるしかないだろう。
名前のいい加減さは、キリギリスにも言えることで、この地方では一般的にキリギリスのことを当然のように「チョンギース」と呼んでいる。それは、キリギリスの鳴き声が「チョン ギース」と聞こえるからである。
草むらなどから聞こえてくる「チョン ギース」という鳴き声は親しみやすいものであるが、それに対して、ヤブキリの鳴き声は「ジーッ ジーッ」や「ジリリリリリ」と聞こえるため、余り好ましく思われていない。
ほとんどの人が、キリギリスとヤブキリついて興味を持つことはないと思われるが、その違いともなるとなおさらであろう。しかし、夏になればこれらの鳴き声から否が応でも逃れることができないのは、事実である。
最近では、虫やカエル、蝉などの鳴き声を騒音と感じる人が多いらしいが、江戸時代にはキリギリスの鳴き声を楽しむためにカゴに入れたものが売られていたという。のんきな時代というよりも余裕すら感じられる。
家庭菜園では、今も春菊や大根、高菜の花が咲いている。手入れが行き届いていないと思われるかも知れないが、来年用の種を取ることを目的にしている。経費節減の利点だけでなく、そこには挑戦する楽しみもある。
その満開の春菊の花に、一匹の幼虫が止まっていた。背中のスジが2本あればキリギリスであるが、1本しかないことからヤブキリに間違いないであろう。オスと思われる幼虫は脱皮を繰り返し、やがて成虫となる。
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