2025年10月08日(水)

コラム・エッセイ

(77)灰重石(かいじゅうせき)

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 「灰重石」と書いて「かいじゅうせき」と読む。それが、この石の名前となっている。怪獣を連想させるような珍しい名前であるが、特に変わった形をしているわけでも、特に変わった色をしているわけでもない。

 ところが、暗闇の中でこの石に紫外線短波ライトをあてると蛍のように光り輝く驚愕の姿に変身する。ライトは宝石鑑定用などに使われる特殊なライトのため、通常のライトで見ることができないのが残念ではあるが。

 ある日、この灰重石がフリーマーケットに出品されているところを、偶然見つけた。「喜和田鉱山産の灰重石」だけでなく「鉱山稼働当時の貴重な鉱物」と題されていたことから、目を離すことができなくなった。

 喜和田鉱山は岩国市二鹿にあったタングステン鉱山で、平成4年(1992)に一旦閉山した。その後も再興を願う鉱山長の長原正治さんによって維持管理されていたが、ついに、平成16年(2004)には完全に閉山となった。

 まだ、維持管理がされていた時には、長栄坑近くに設置された「光る石資料館」で各種の鉱石を購入することや坑内見学が可能であった。その間に何度か訪れたことはあったが、うかつにも見学をする機会を逃した。

 取り返しのつかない失態に気づいたのは、後になってからのことで、昨年開かれた県立山口博物館の企画展「カラフル鉱物大集合」では、喜和田鉱山坑内の天井部分を写した長さ約14mの写真が展示されていた。

 その場所こそが、鉱山最大と言われた第11鉱体であり、紫外線短波ライトによって暗闇の坑内に浮かび上がっていたのは、青白く輝く灰重石の長大な天の川であった。まさに、世にも不思議な風景が広がっていた。

 購入した灰重石には、長原鉱山長直筆のメモ書きと第11鉱体を記した印刷ラベルのコピーがつけられていた。貴重な鉱石を手にできた喜びとともに、持ち続けなければならないであろう責任の重さを痛感している。

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