2026年05月28日(木)

コラム・エッセイ

(82)五月雨(さみだれ)

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 「五月雨を あつめて早し 最上川」という句がある。この句の作者が松尾芭蕉であることは、誰もが知るところであろう。ところが、句の中の「五月雨」については、正しく理解している人が少ないように思われる。

 ともすれば、「五月雨」を現在の5月に降る雨と理解しがちであるが、それは間違いである。間違いの原因は、明治6年に太陰太陽暦の旧暦から太陽暦の新暦に改暦された時に生じた季節と月日の大きなズレと言える。

 たとえば、今年の旧暦カレンダーでは、6月18日から7月17日までが旧暦の五月となっている。その期間は、ちょうど梅雨時期にあたる。かなりややこしくなるが、今の時期に降る長雨を五月雨と言うことができる。

 あらためて、芭蕉の句を読み直してみると、梅雨の長雨によって増水した最上川の情景が浮かんでくる。芭蕉が川下り舟に乗船した地が、山形県新庄市本合海(もとあいかい)の八向楯(やむきたて)あたりとされている。

 また、芭蕉が乗船した旧暦の元禄2年(1689)6月3日を新暦に変換すると、7月19日となる。導き出した日付が正確かどうかは分からないが、いずれにしても、この日が梅雨の時期にあたることだけは確かであろう。

 昔の方が今以上に天災が多かったことは容易に想像がつく。その被害は、比較にならないほど大きなものであったはずである。それでも「五月雨」という美し言葉を生み出せたのは、心に余裕があったからなのだろう。

 それに比べると、最近の雨には情緒が失われているように感じる。集中豪雨やゲリラ豪雨などと呼ばれている大雨は、地球の温暖化が原因とされているが、それも人間が豊かな生活を追求した結果と言えるであろうか。

 雨は、今も降り続いている。付けっぱなしのラジオは、梅雨前線の停滞によって各地で非常に激しい雨が降っていると報じている。いつまでも止まない雨に、これ以上被害が広がらないことを願わずにはいられない。

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