2026年07月15日(水)

コラム・エッセイ

(99)JR美祢線

続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)

 以前から、今年6月末の大雨によって被害を受けたJR美祢線のことが、気になって仕方がなかった。テレビや新聞などで連日のように報道された惨状を目にするたびに、居ても立っても居られない気持ちになった。

 それは、50年以上も前のことになるが、国鉄の厚狭機関区でディーゼル機関車の機関助士として、美祢線に乗務したことがあったからであろう。

 日々薄れていく当時の記憶をたどってみると、懐かしさで一杯になった。

 ディーゼル機関車がけん引していたのは、石灰石専用貨物列車であった。主にセメントの原料となる石灰石を美祢駅で積み込んだものを、美祢線、直通線、宇部線、貨物支線を通り工場のある宇部港駅に運んでいた。

 その宇部港駅と美祢駅は、貨物取扱量が日本一、二位になるほどの繁栄を誇っていた。その記録は、石灰石専用貨物列車のピストン輸送が生み出したものであったが、それらを陰で支えていたのが美祢線ともいえる。

 残念ながら、昭和57年(1982)に美祢と宇部とを結ぶ「宇部興産専用道路」が完成したことによって、石灰石を運ぶ貨物列車としての役割を終えている。その後、鉄道の関係施設は、次々と廃止されて姿を消していった。

 直接確認した訳ではないが、すでに当時所属していた厚狭機関区や休憩や宿泊で利用していた行先地の宇部港駅、さらに直通線と呼ばれた厚狭駅から宇部駅までの専用線や居能駅からの貨物支線も廃線となっている。

 先日、美祢に行く機会があったので、被害を受けた南大嶺駅と四郎ケ原駅間の現場に立ち寄ってみた。幸運にも、橋の撤去作業が始まる前であったため、今まで映像や画像で見てきた姿を、直接確認することができた。

 すでに、現状を回復し、まるで何事もなかったかのように流れる厚狭川の中に、今も残されたままとなっている鉄路の残がいを目の当たりにすると、懐旧でもない無念でもない、何とも言えない複雑な気持ちになった。

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