コラム・エッセイ
続 周南新百景(77)桜谷ダム(周南市上村)
続々周南新百景 / 再 周南新百景 佐森芳夫(画家)![]()
トンネルを抜けると、正面に「ダム内立入禁止 入るな!」と書かれた大きな看板が現れる。文字の横には、ヘルメットを着用した男性が入るなとばかりに両手を前に差し出したイラストが描かれている。
看板の後からは、ダムの巨大な堤体が迫ってくる。国土地理院など多くの地図には、桜谷水源池と表示されているが、所有企業の社史に桜谷ダムと記されていることから桜谷ダムが正式名称ではないかと思われる。
しかし、下流からみる堤体には設備らしきもがほとんど付いておらず、ダムらしさが感じられない。ダムが集落から離れた場所にあることは珍しいことではないが、これほど山の高い位置にあることも珍しい。
これらの疑問を解き明かす鍵となる施設が、富田川沿いの川崎公園と家電量販店との間にある川崎水源地である。にわかには信じがたいが、ここから富田川の水が送水ポンプによってダムに揚水されているという。
当初の計画が中止となり変更を余儀なくされた結果、昭和11年にダム建設が着手された。無謀とも思える計画が、当時の工業用水の不足がいかに深刻であったかを物語っている。
ダムの近くには、和田利右衛門が寄進した石鳥居がある妙見社や妙見社の参道、かってこの地域の集落を結んだ古道などが残されている。ダムやダム湖の周辺には、立入禁止となっている箇所が多くある。ルールが守れる範囲での探索を楽しみたい。
暖かい日が続き、桜谷の桜の花が咲く日もそう遠くないに違いない。
