コラム・エッセイ
「おいのばし」「物故様」
周南漫歩◎筆者からのメールを受け取った若い人から「おいのばしって何ですか」と聞かれた。何のことかわからずに聞き返すと、筆者のメールの「追伸」の文言だった。この人は「追伸」の意味も正確な発音もわからなかった。
◎言うまでもなく追伸とは、手紙やメールを書き終えた後、伝え忘れたことや内容を補足する際に使う言葉だ。英語ではPost Scriptを略して「PS」と記す。
◎手紙やメールで改まった文章を書く時に「拝啓」▽「前略」▽「敬具」▽「記」などはよく使う文言だ。しかし、仲間内や親しい間でのやり取りしかしていないと、こうした社会的な慣習は身に付かないのかもしれない。
◎そういえば40年も前、筆者のかつての職場で大学生に封筒のあて名書きのアルバイトをさせた際、平気で「○○物故様」と書いたのを見つけて仰天したことがあった。
◎封筒に書き写す名簿には、すでに故人になった人には二重線を引いて「物故」と書き込んでいたが、大学生は「物故」の意味を知らず、単に名前が変わったぐらいにしか思わなかったという。
◎この大学生に決して悪気はなく、ただ物故の意味を知らなかっただけだった。こちらも「おいのばし」と同じケースかもしれない。
◎いつの時代も過去と現在、未来の狭間でいろんなことが起きていく。その交差点に立つ私たちが、後進に伝えることは意外とたくさんありそうだ。
(山上達也)
