コラム・エッセイ
「親不知を目指す」⑨ 「この余裕がいい」
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修山口から北アルプス方面に行くとなると、その行き帰りの移動がなかなか厄介だ。よほど効率よく動かないと乗り継ぎで長い待ち時間ができたり、中途半端な場所で一泊することになって翌日以降のつながりが悪くなる。
槍ヶ岳や穂高岳など、上高地を起点に登るのなら、大阪発の上高地直行の夜行バスを利用して眠っている間に移動でき、早朝から歩き始めることが可能で、余裕でその日のうちに頂上を踏むことができる。夕方一杯まで仕事をしても19時台の新幹線に乗れば間に合うので非常に効率が良い。何度か利用したことがあるが、人気も高く、かなり前から予約しないと席がとれない。
ただ、天候不良で計画を1日先に延ばしたい場合は、キャンセルは出来ても翌日の便に振り替えて乗れるという保証が全くない。予約はできても当日まで天候その他を気にするドキドキプランとなる。
ならば自由度の高い鉄道ということになるが、徳山を朝一番の新幹線に飛び乗っても、名古屋で在来線に乗り継ぎ、松本から松本電鉄、さらにバスに乗り換えてようやく上高地に着くのは午後2時ころなのでいくらも行動できない。
自家用車という手もあるが、何せ一人だ。燃料代、高速代、駐車場代など諸々を考えるととんでもない不経済だ。それに必ず車を停めた場所に戻らなくてはならない。長野県の山の中から歩き出して新潟県の海岸がゴールという縦走では全く現実的ではない。定員一杯に乗って運転手も交代、経費は割り勘なら選択肢の一つになるかもしれないが、誰も取り合ってくれないので却下。
今回の親不知を目指す縦走の起点となる白馬村だが、どう調べても移動に丸一日かかる。徳山を新幹線で朝出ても、着くのは午後遅くになる。八方尾根の途中でテント泊もありだが、人気コースで人通りも多く、公式のキャンプ指定地もないので目立ち過ぎるし、通りがかりの誰かに小言を言われそうで面倒だ。
東京に暮らす息子夫婦が、新宿発の白馬行夜行バスが安くて便利だという。早朝に到着するので無駄が無いというのだ。それも一つの手かもしれないが、やれ夕食だ前夜祭だと誰に似たのか、この期に及んですねにかじりつかれ、その上に土産の一つも買うならば、ふもとの安宿に前泊して近くの赤ちょうちんで一杯やったほうがはるかに安上がりだ。
登山口まで至る手段について随分と遠回りの話をした。結局は新幹線と在来線を乗り継いで夕方早くに白馬駅に降りた。列車の移動中はサンダル履きで、登山靴は袋に入れたままぶら下げている。歩いて20分ばかりのところにある安宿を予約してあるが、さすがにサンダルでは歩きにくく道端で履き替えた。
前夜までドタバタの準備だった。ザックの荷物を出したり詰め込んだりで、物は入っているのを確認しているが、まるで整理ができていない。宿についたらもう一回荷物を全部ひっぱり出して再整理だ。何だかこの余裕がいい。
夜行バスは眠っている間に移動できるので非常に効率が良いのだが…
早朝から歩き始めれば、余裕でその日のうちに頂上を踏 むことができる
結局は新幹線と在来線を乗り継ぐ
