コラム・エッセイ
「親不知を目指す」⑤「軽量化その2」
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修前回、山の準備について少しふれた。これまた他人のどうでもよい山遊びの話だ。普段は山の話など聞かれない限りは自分の方から話すことは皆無に近い。山をある程度歩いている人なら興味を持って聞いてもらえるが、そうでない人には「それがどうした…」くらいのもので、それこそ迷惑な話だ。
普通のごく一般の人からすれば、山に大汗をかいてテントを担ぎ上げ、大風にテントがつぶされるのではないか、真冬にはテントはバリバリに凍り、風に叩かれて内側に張り付いた霜がはがれて雪のように降るなど、どう考えても全うな人が喜んですることではないと思う。
もちろん、そんな状況下では時に「命」を意識することもあり、山に来たことを後悔するときもあるが、ある種のビョーキか学習能力が無いせいか、やり過ごせばたちまち快感となるから始末が悪い。こんな常人からすればどうでも良い体験談を長々と書き連ねることにも多少の遠慮もある。とはいえ世はダイバーシティ(多様性)の時代でもある。この手の人間もいるんだと寛容の精神で見守っていただければ幸いだ。
まわりくどい話になってしまった。山歩きは事前の情報集めにはじまり、計画、準備が大事だといわれているが、それに費やす時間こそが至福であり醍醐味かもしれないと思っている。
長く山をやっていると道具類に関しては一通りのものが揃っているので、春夏秋冬どの季節に行っても新たに買い揃える必要はない。ただ、若い時に比べて明らかに体力や持久力といったものは落ちているのは確かで、装備の取捨選択に頭を悩ますことも多くなり、かつては持て余す体力にまかせてキスリング(リュックサック)の口が閉まらないほど詰め込んでも歩けたが、悔しいかな最近は、いくらM気があっても背負うことができる重量の限界を思い知ることが多い。快適さを求めれば重くなり、軽さを求めれば我慢の要素も増えてくる。よって想像力と自分の耐性との駆け引きを自問自答しながら準備をするようになった。
最近は山道具の品質や性能も向上しているのは確かで、カタログを眺めて効能書きを読んでいると、つい手を出したくもなる。しかし、いくら最新のうん万円の登山靴を買っても登りは辛く苦しいことにかわりはないし、いくら最新式のザックでも重いものは重く、キャッチコピーほど軽くはならないことを何度も身をもって体験した。宣伝文句に惑わされないように意識し、最近の流行などというメーカーの作戦にはかかってなるものか。
まずはテントだ。手持ちでいくつかあるが、一般のドームテントは一式2㎏近い。昔のビニロン製を想えば空気のようなものだが、ツエルト(簡易テント)ならもう1㎏軽量化できるし大きさも片手に乗るほどだ。
とはいえ、似て非なるものとはこのことで、形は似たようなものだが、居住性、快適性は目方以上の差がある。それでも1㎏の軽量化を選ぶ。
真冬にはテントはバリバリに凍ることもある
いくらM気があっても背負うことができる重量の限界を思い知る
