コラム・エッセイ
「親不知を目指す」⑥ 「質素を旨とする」
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修最近はコロナの影響なのか、密を避けてのアウトドアがブームらしい。テントを持参して家族でキャンプに出かける人が多くなったとテレビで言っていた。
見ていると、キャンプの達人が登場してテントの張り方など、くどいほど解説し、道具の紹介もキリがなく、便利グッズの類をこれでもか…と、引っ張り出しては実演する。その気になって買い揃えれば何十万円は軽く飛んでいきそうだ。つまりはメーカーの片棒を担いでいるだけではと疑いたくもなる。
もっとも、世の中にお金が回り、作る人、運ぶ人、売る人が潤うのだから全てが悪いなどとは言わないけれどねえ…。
焚火をつつきながら「炎を眺めていると人と自然と一体になったような気がしますよね…」「自然に生かされているのを実感します…」などとおっしゃる。この人は本気でそう思っているのだろうか?
いやいや、きっとテレビ局が作った台本を読まされているだけだ。そう信じたい。田舎に住んでいれば、無用な焚火はしないが風呂焚きで毎日のように薪を燃やす。炎を眺めても特別に何も感じないが、積んである薪が減っていくのが気がかりでしかたがない。
でもね。あまり大きな声では言えないけれど、山歩きもね、何十年もやっていると今まで買った登山靴やザック、テントなんかも全部足したら何十万円は軽〜く超えているんだよね〜。カッパだけでも1着がうん万円だしね。
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数日間も山でテント生活をするとなると、とにかく無駄を排除して軽量化につとめる。教科書では必要な物となっていても、我慢する。耐える。辛抱する…ことで減らせる。ただ、寒さ対策はしっかりとしたいので、寝袋と手袋はそれなりのものを用意し、後はとにかく質素を旨とする。
前回、テントはテントでもツエルト(簡易テント)を選んだと書いた。どんなものかというと、一応はテントの形はしているが、狭くて通気性も悪く居住性は極端に悪い。大きさは幅が90センチ、長さが2メートルほど。高さは1メートルもなく座って天井に頭がつくほどだ。ほぼ畳1枚分だが、実際には両側に壁があるので、使えるのは中央部分の幅60センチくらいで、寝袋を拡げて荷物を置くとほぼ一杯となる。荒天時はその中で食事づくりもするが、いったん物を片付けないと作業スペースがない。
何よりも外からの防水は完璧だが通気性はゼロで、中で煮炊きをすれば湿度100%となり結露で不快きわまりない。それでも一般のテントより1キロの軽量化ができる。
マットも必須アイテムだが背中から腰まであればよい。空ザックを下半身に敷く。枕はカッパでも何でも使わないものを丸めて袋に詰めればいい。
食後は風呂もなければテレビもない。優雅に音楽を聴きながら本を読むなど電池が惜しくてできない。酒もキッチリ泊数で分けて我慢。後は寝るしかない。
テントはかさばるし、 目方は一式2kg近くになる
テントは慣れれば快適で過ごしやすい
ツエルトは軽くて小さくなり、 手のひらにのるほどだ
