コラム・エッセイ
「親不知を目指す」⑦ 「何を置いていくか…」
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修今に始まったことではないが、最近、物忘れの頻度が高くなってきた。時計が無い、メガネが無いのは日常で、それを見越して予備があるので困りはしないが、靴を履いて外に出てから車のキーを持っていないことに気付く。これはかなり症状が進行しているのかもしれない。それらの定位置を決めてはいるが、何かのついでにポンと何気なく置いてしまうともういけない。大騒動をしてようやく見つけ出し、そういえば昨夜ここでゴソゴソしていたなあ…。日々のルーチンを意識して守らないと社会生活に支障をきたしそうだ。
それでも、親不知を目指すにあたり、何日もかけて装備リスト作りをして、何を準備したのかは今でも覚えている。
「あったらいいな」的なものは徹底して外し、何を置いていくかを悩んで精選したつもりだ。ツエルト(簡易テント)、シュラフ(寝袋)マットなど、テント泊の最低限の道具類は多少の快適性を犠牲にして軽量化を優先したが、カッパやラジオ、ライトは外せない。着替えの類はキリがないのでTシャツとペラペラの薄い安物ジャージを1枚だけ。地図は全行程を広域版とルート周辺の詳細版を正副用意し、コンパス(磁石)は常用はリストコンパス。シビアコンディション用にもう一つ。それに、多少危うい岩稜帯の通過もあるのでヘルメットは必携だ。3,000メートルの稜線上では水は貴重品だ。3.5リットル分のボトルも用意。
あとは食料だ。予定は3泊。予備日1日とし、3泊分は朝夕にアルファ米のご飯類と副食にフリーズドライのシチューとかカレーといったものだけにし、予備日はインスタントラーメン(2本入り棒ラーメン)一つとする。
昼食という概念はなく、高カロリーの羊羹やどら焼き、ゼリーなど日頃は欲しいとも何とも思わない甘いお菓子などを行動食とする。火を通さなくても、水が無くても食べられるものが基本で、若干多めに準備しておけば非常食としてひもじくても何日かは食いつなげる。
何だかんだと雑用も多く、まとまった時間が取れなかったが、出発予定の1週間前にほぼ一日かけて食料の買い出しに出かけた。ついでに、ガスや電池は残りがあっても新品に更新だ。2年前に電池交換したままの高度計付き腕時計の電池も入れ替えた。
おっと。酒を忘れていた。これだけは外せない。1日歩き終わってテントを立てて夕食用のお湯を沸かせばひと息つける。ここで本当はキンキンに冷えたビールで乾杯!と、いきたいところだが、これはどうしても叶わぬ夢で即却下。高効率優先で安物のウイスキーを500ミリリットルのペットボトルに移し替え、山では秘蔵の高級ウイスキーのごとく舐めるように独酌だ。
これらを50リットルのザックに詰め込んでみる。さすがにかなり余裕ができた。ヘルメットやストックなども無理なく収納完了。再チェックで忘れ物無し!
コンパスの常用は腕時計のベルトにつける リストコンパス=通常はこれで事足りる
朝夕の食事はお湯を入れて 15 分の アルファ米とフリーズドライの副食一品だけ
