2025年09月16日(火)

コラム・エッセイ

今年を振り返る2020「ちょっとだけ希望が…」

おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修

 コロナ禍により、経済も落ち込み閉店、休業、失業などの話題に加えて最後の砦の医療機関に余力はなく、医療崩壊という最悪のシナリオがちらつく。身近な場所での感染情報は、すぐそこまでやってきていることを実感し、何もかもが予測不能で希望の持ちにくい1年だった。

 このコロナ禍で多くのことを考えさせられた。マスクが店頭から消え、マスクを求めてドラッグストアをハシゴするという異常な事態となった。一般市民の買い占めも一因とも言われるが、山奥に暮らす者の一人としては、たまの買い物はまとめ買いは日常で、常識の範囲でのまとめ買いは許容範囲だと思う。 

 悲しいのは転売目的で買い漁る輩が大勢いることだ。他人の不幸に乗じる火事場泥棒行為そのもので断じて許されるものではない。マスク転売禁止の法律ができて、何とか市中に出回るようになったが、田舎暮らしの高齢者など買い物難民と呼ばれる方にとってはタイムラグもあって入手困難な状態が続いた。

 自慢話をするわけではないが、わが須金では運よく県内の縫製工場がマスクを作っているという情報を得て、決して安くはないが須金の人限定であっせんすることができた。唯一の店舗「ふれあいプラザ」はもちろん、須金郵便局でも取り扱い、多くの住民が手に入れることができた。

 地区社協は民生委員の見守り対象者全員に無償で配布するという英断もしたが、元はといえば住民の縁者がマスクを作っているという世間話からの発展で、関係者が素早く決断を下し、連携して取り組んだからに他ならない。その話を聞いて地区外の人も欲しいと尋ねて来られたが、掛け値無し、手数料無しでのあっせんでもあり、次の入荷が確約されてない状況下では、首を立てに振れない苦しい対応もあったことも添える。

 秋には恒例となった須金地区の防災訓練が実施された。密を避けるために例年のように全住民が一堂に会しての避難所体験は見送ったが、消防団員や社協関係者が須金の全世帯を安否確認して回る訓練を行うことになった。それに先立ち、当日地区外に出ていれば別として、在須金なら自宅の玄関先やポストに事前配布した「元気です」と印刷された白いタオルを出すようにお願いしていた。

 正直なところ回覧板を読むこともなく、チラシも風呂の焚き付けになるという話も聞くので、果たしてどこまで周知できるか不安もあった。ところが、ふたを開けてみると、なんと9割以上の世帯が掲示していたというではないか。

 須金は過疎と高齢化に歯止めが効かず、決して明るく輝かしい未来は期待できないし、田舎故の面倒な関係も否めないが、いざという時にはこんな連携行動ができる力強い地区だと気付くことができた。

 コロナで始まりコロナで暮れる2020年だが、思い返せば須金の人たちの決断力、実行力、団結力を垣間見て、ちょっとだけ希望がちらつく1年だった。

須金の人限定でマスクをあっせんすることができた

今年の防災訓練は須金全戸に「元気です」と印刷 された白いタオルを出すようにお願いした

消防団員や社協関係者が須金全世帯をも れなく安否確認して回る訓練をした

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