コラム・エッセイ
「走れ!おじさん」2020③
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修人の品格とはなんだろうか?やはり正直で謙虚な人が上等だろう。けっしておごらず、人前で武勇伝を吹聴したり、延々と手柄をひけらかすような輩は下等な部類に入るのではないかと思っている。
昔、小学校の国語の教科書に宮沢賢治の「雨ニモマケズ」が載っていた。当時は昔の人が雨が降っても、風が吹いても、辛抱して辛抱して怠けないで働くことが大事なことなんだ…くらいにしか思わなかった。
今思えば社会の理不尽、格差、欺瞞、耐え難い自然現象等々と無関係に不自由なく暮らせる子供に染み入る文章ではなかったのだろう。もっとも優秀な子は何かと感じとるものがあったのかもしれないが…。それでも長い年月のうちに、身の回りで起こる自分ではどうにもならない出来事に絶望して何度か「雨ニモマケズ…」と唱えたことがある。
宮沢賢治はこの文章を詩として書いたのではなく、自分に言い聞かせる自戒のメモとして手帳に書いて持っていたという。「ミンナニデクノボートヨバレ ホメラレモセズ クニモサレズ…」と謙虚に空気のような存在になることを求めていたのかも知れない。
人には当然のことながら自己顕示欲もあれば承認欲求もあって当たり前。でも度を超してしまえば他人からは品格を欠いて見られる。最後の「サウイフモノニワタシハナリタイ」に頷けるし、多少はふんべつもつく歳となった。
書こうか書くまいか、人の品格の問題としてちょっとだけ迷った。でも書こう。
昨年の11月に広島の湯来町で開催された「湯来町ササユリマラソン大会」で60歳以上の部で1位をもらって天狗になったことは前々回書いた。この大会は総勢300名ほどのコンパクトなレースで、エントリーもほとんどが地元からだ。言ってはご無礼かもしれないが、それほどレベルは高くない大会だった。それでも老若男女合わせて300人中28位と、全体の上位1割に紛れ込むことができたことは老人としては感激ものだった。秋からランニングを再開してかなり調子が上向いてきたぞ。
翌12月には「萩城下町マラソン」に出た。このレースは2,000人規模で全国区の大会でもあり、順位など期待はしていなかったが、結果は60歳以上の部でなんと5位という好成績だった。総合順位も2,070人中132位。この規模でもやれば出来るのものだとますます鼻が高くなる。さすがに他人に吹聴するのはかろうじて踏み止めることができたが、家族には早速に記録証の写真を送って自慢を始める。もちろん無反応だが…。
賢治は35歳で後世に伝わる自戒のメモを残した。一方、人生の終盤を迎えても、まだこれ見よがしに自慢話を続ける品格の低さよ。

萩城下町マラソン=2000人規模で全国 区の大会でもある

結果は 60 歳以上の部でなんと5位という好 成績だった

家族には早速に記録証の写真を送って自慢を始める
