2025年11月09日(日)

コラム・エッセイ

「走れ!おじさん」2020⑤

おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修

 これでもか。と言うほど長々と自慢話をしている。他人に「一等賞をとってよかったねー」などと褒めてもらいたいからでは無い。言い訳になるかもしれないが、今自慢話をしておかないと次の機会がないと思っているからだ。

 十九や二十歳のころまでは、世間を知らないということもあるが、無鉄砲で何をやっても恐ろしいということが無かった。たとえ目標がかなわなくても永遠の未来があって、いつの日か必ず手が届くと信じていた。

 もちろん、頭も悪いし世渡りも下手なので、博士にも大臣にもなれなかったし、根性無しで人並みの努力ということをしないから目標の下方修正は日常だ。それでも明日から頑張れば何とかなるという根拠のない自信のようなものがあった。

 ところが歳をとって、いくら願っても努力しても、物事に限界があることに気付いた。これを世間では「ふんべつが付くようになった」というが、それでも性懲りもなく、やれば出来るかも…。と、妄想しては挫折を繰り返している。

 「走れ!おじさん」をやるそもそもの理由だが、やはり山を長く歩き続けたいという、いたって遊び人的な目的がある。北アルプスの主脈は歩き通したが、南アルプスは細切れのままだ。もう一度北鎌尾根を独りで歩いてみたい等々、山への想いは尽きない。

 若い時ならいきなりでも歩けるかもしれないが、悔しいけれど60歳を過ぎると少々の体作りをしてからでないとさすがに無理だと痛感することが多くなった。それならと本気?で走り始めたというのが顛末だ。

 マラソン大会で記録を意識し始めたのはここ数年だが、それまでは完走、もしくは自分の設定した時間内に走れればよしとしていた。ところが数年前に大向で開催される「向道湖マラソン大会」で60歳以上の部で奇跡的に入賞した。翌年も2位だった。

 そもそもこのカテゴリーにエントリーしたランナーは20人ほどだから入賞の確率は高い。それでも鼻が高くなって、ひょっとして他のレースに出ても上位に紛れ込めるのではないかと妄想が始まってしまったのだ。

 確かに、賞を頂くと鼻は高くなるが、それ以上に自信がつく。非常に乱暴な計算だが、世に同年代は何百万人といるが、ランナー20人中で2位ということは上位1割以内だ。

 ひょっとして全国ランキング上位5パーセント以内あたりにいるかもしれない…ということは、世の同年代で一斉に徒競走したら…などと更なる妄想が始まる。

 今まで人に秀でるものなど皆無の人生だったが、この歳でようやく手に入ったささやかな自信だ。今季のマラソン大会はコロナ騒動でことごとく中止となったが、来年のシーズンにまた賭けよう。

 でも、まてよ。来年になれば今年59歳のランナーが60歳以上の部にピカピカの新入としてやってくるではないか。こちらは加速度的に老いていくばかりの現実に気づいた。だから今一生懸命自慢している。

もう一度北鎌尾根を独りで歩いてみたい等 々、山への想いは尽きない

60 歳以上の部で奇跡的に入賞し。翌年も2位だ

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