2025年09月16日(火)

コラム・エッセイ

祖母〜傾山縦走記㉝ 《適度な緊張感がすこぶる良い》

おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修

 祖母山と傾山の縦走コースで一番標高が低いのが尾平越で約1,180メートルだ。祖母山(1,756メートル)からいくつものピークを越えるアップダウンが続いたが、基本は下り基調だった。ということは、この先は登り基調ということだ。とりわけ今夜の宿に予定している傾山直下の九折越(つづらごえ)に建つ避難小屋までにも本谷山(1,642メートル)笠松山(1,521メートル)はじめ1,500メートルを超すピークをいくつも登り返さなくてはならない。

 マラソンでいえば中間の折り返し点といった所だ。距離的には真ん中かもしれないが、残存の体力や気力が半分という保証はない。マラソンなら全力で走り切って倒れこむようにゴールしても、時間なり順位の結果がともないそれが目標でもある。だからその後は這って帰っても良い。

 ところが山歩きの場合は寝場所にたどり着いた後にも雑多の仕事が山積している。今夜の小屋は無人の避難小屋で昨夜のような快適さは期待できない。とりあえず風雨はしのげるかもしれないが、食事の準備はもちろん寝る支度から明日の段取りまで明るいうちに済まさなければならない。それに小屋が損壊しているという情報はないが、もし使えなければテント泊に変更だ。そういった諸々の作業をする余力を残して到着したい。

 あらためてこの先の様子を地形図で確認するが、ざっくりと累積標高は1,000メートルだ。日没までに余裕で着くような時間配分や腰を下ろすタイミングなどをイメージして出発する。

 話は飛ぶが、これが北アルプスや八ヶ岳などの営業小屋なら1泊1万円を払えば食事も用意してくれるし、たとえ見知らぬおっさんと同衾状態としても一夜の生活の心配は無用だ。天候や体調がシビアな時は確かに重宝する時もある。

 高度を上げると再びガスに包まれ視界は数十メートルとなった。基本的には尾根沿いにつけられた一本道なので迷うことはないが、時には広く緩やかな場所もあり落ち葉で踏み跡が不鮮明な所もある。これも鹿など野生動物による採食で木が枯れて広くなってしまったが故におこることだ。その都度立ち止まっては確認作業をする。

 前にも書いたような気がするが、こんな時に高度計が大活躍だ。視界のない場所でも立っている地点の傾斜具合や高度からほぼピンポイントで現在地を特定できるので進むべき方向が予測できる。かつては樹林の中を縫うようにつけられた道でスズタケに難渋はしてもルートを見失うようなことはなかっただろう。でもこの適度な緊張感がすこぶる良い。

 本谷山まで来た。ここで見てはいけない物を見てしまった。この縦走路は半世紀も前に整備されたとのことだが、世は登山ブーム真っ盛りのころだ。多くの若者がこの山を舞台に青春を謳歌した名残だろうか、一升びんなどが散乱しているではないか。

落ち葉で踏み跡が不鮮明な所もある。 この適度な緊張感がすこぶる良い

見てはいけない物を見てしまった

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