コラム・エッセイ
山なんて嫌いだった④ 「のーくれ者の知恵と実績?で…」
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修前回、直径15センチで長さ4メートルの杉丸太は市場価格が1本900円だと書いたが、直ぐに説明の誤りに気づいた。計算式は合っているのでまあいいか…。とも思ったが、どうも気になって仕方ないので恥を忍んで訂正をさせて頂く。
そもそも丸太を木材市場で取引する時、直径14センチ以上は2センチきざみで仕訳けられ、14センチ以上16センチ未満は同じくくりになる。例えば14センチちょうどの丸太も、直径15.9センチの丸太も14センチという規格で取引されるということで、14センチちょうどの丸太をそろえれば額面通りでお得になるが、15.9センチの丸太を出しても14センチと同じくくりなので材積の割に安いということになる。何より14センチに1ミリでも足りなければ単価はガタッと落ちる。よって安全のために15センチ以上のものを出荷するようにしている。だから自分の頭の中では丸太の最低規格は15センチとしていることから1本が900円となった。しかし取引では14センチの計算なので800円にもならないのが現実だ。繰り返しになるが、急斜面の立木を伐倒して土場まで引っぱり出し、長さを揃えて切って選別し、木材市場まで運んでの値段だ。それから市場の手数料や運賃を差し引く。さらに現場での機械代や燃料費を引く。あ〜あ。書くのも考えるのも嫌になる。
わずか3反ばかりの荒れた山を伐採し始め、途中で自分の取り分は世の最低賃金に遠く及ばないことに気づいた。途中で放り出すわけにもいかず、コスト最優先で少々の無理をして先日何とかけがもせずに終えることはできた。
須金の梨やブドウといえば地元の誇れる産業として疑う余地はない。もちろん各農家の方が努力と工夫を重ね、勤勉に取り組まれたからに他ならない。
つい先日のこと、その経営者の一人と世間話をしていて笑い話にもならないようなショックを受けた。「木は儲かるか?」と尋ねられ「粗利は真っすぐな直材なら立米5千円。バイオ燃料行きならその半分ぐらい」と答えた。さっきまで立っていた水分たっぷりの杉は水より軽いとはいえ、限りなく比重は1に近い。多少乱暴だが1立方メートルは1㌧と思っても良い。
ということは1キロが5円だ。細かったり、曲がった丸太はバイオ行きで2円か3円だ。対して梨は1キロが600円。ブドウは1キロが1,400円。高級品種は2,000円にもなるという。それも毎年収穫できる。丸太は50年60年かけてやっと1キロ5円が一回きりだ。気の毒がって「体を壊さんようにのう…」で会話は終わった。
やっぱり「山はつまらん」は身をもって体感し、現実を思い知った。今さらこの伐採跡地に杉を植林して半世紀後に1キロ5円にでもなる保証はない。とはいえ、荒らしたままでは山をきれいにしようと苦闘したこの数カ月は何だったのかとなる。後発で梨やブドウ農家の真似をしても恥を晒すのは明白だ。
そうだ。ユズを植えよう。牛に“舌〟刈りさせる「のーくれ者」の知恵と実績はある。でも、生きている間に元が取れるかは不明だ。
食材は提供するが火がつかなかったらそれまでという設定は大人も本気になる。

牛に“舌”刈りさせる「のーくれ者」の知恵と実績はある

山をきれいにしようと苦闘した。そうだ。ユズを植えよう

少々の無理をして先日何とか怪我もせずに伐採を終えることはできた
