コラム・エッセイ
親不知を目指す㉑ 「またまた予定変更」
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修一人歩きの醍醐味は、何といっても誰にも気兼ねをせずに自分の都合で計画を変更出来ることと、その後の行動を一生懸命に考えることかもしれない。
初日からヘルメットの破損に気づいて出発が遅れたし、唐松岳の山頂からの大パノラマに時を忘れ、時間切れで前進を諦めた。きょうも降り続く雨に出発をためらい、テントをたたんで歩き出したのは7時を過ぎていた。もし、グループで歩いていたら大騒動になっていただろう。いくら山歩きという遊びの世界でも、他人と行動するなら大人として集団の秩序を守る責任がある。準備不足が原因で他人を待たせるなどしたら下山するまでクドクドといじられ、山頂で計画を無視して座り込むなど言語道断で、「勝手なことばかりする」と、下山までどころか死ぬまで語り継がれることになる。
それが一人歩きとなると、全ては自己責任となり、安全面の不安要素は高くはなるものの、自由度は反比例して格段に高くなる。生来の「のーくれ気質」で目標の下方修正は常に頭をよぎるが、それでも当初の目標達成のための算段をはじめる。一人歩きだからこそ置かれた状況やこれから起こるであろう現象を想像し、自分の力との駆け引きをはじめる。いくら多くの人が訪れる山とはいえ、所詮は人智を超える自然に身をさらすとなれば、四方八方がリスクのかたまりと思わなければならないが、人と歩くと根拠のない安心感から油断してこの算段をしなくなる。
山歩きをこれまで何十年も続けてこられたのは、たまたま大きな事故に遭わずに済んだからでもあるが、カッコよく言えば、一歩山に足を踏み入れたら、いや、その前から歩く山を想像して“心技体〟の準備をすることから始まり、山中では感覚を研ぎ澄ませて対話して算段し、達成できた時の成功体験が麻薬となって今があるような気がする。
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唐松岳の山頂から4時間。雪崩で破損して改修中の天狗山荘に着いた。相変わらず視界は悪いが雨は弱まってきた。難所といわれる部分もクリアしてちょっと安心。予報では昼前から天気は回復するようだ。ここから白馬岳まで3時間。さらに今夜の宿、雪倉の避難小屋まで2時間ちょっと。頑張れば日没までに十分着ける。このまま休まずに行こう。
しばらくして鑓(やり)温泉からの登山道が合流する分岐に着いた。ちょうどそこを登ってきて一休みしている登山者に出会う。挨拶だけのつもりが親不知までの話となり、とうとう荷物を降ろして本格的な情報交換の場となってしまった。氏が言うには今日は白馬までにして、明日は朝日小屋に泊まるのがお勧めという。それでも十分に親不知までいけるという。ビニール袋の地図を出してやりとりしていると、それも手だな!と思う。またまた予定変更だ。
唐松山頂から4時間天狗山荘に着いた:難所はクリアした
雪崩で一部損壊し改修工事中:2019年はキャンプ場と売店のみ営業
ここで荷物を降ろして本格的な情報交換
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