コラム・エッセイ
祖母~傾山縦走記㉘ 《うーん“保護”ね~》
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修祖母山九合目の避難小屋を出て1時間半ほどで障子岳に立った。今夜の宿は傾山手前の九折避難小屋で正味8時間の行程だ。このペースなら途中でのんびりしても十分日没までに到着できる。ただ、まるで展望のない縦走路でしかもアップダウンが延々と続くとなれば、人によれば難行苦行かもしれない。山好きでなければ拷問と感じるかもしれない。もちろん山好きでなければこんなところまで来ないだろうが…。
以前にも書いたような気がするが山歩きには地形図は必携だ。これがないと恐ろしくて歩けない。等高線がうねうねとし、眺めていると目がおかしくなるので使わないと断言する人もいるが、初めての山でこんなにアップダウンが長時間続くからこそ必要なんだけどねえ。
地形図からは読んで字のごとく地形が分かる。平面の紙だが立体に見える優れものだ。しかも標高(高さ)の精度は10メートル単位だから山歩きにはちょうど良い。これから現れるであろうピークは何メートル登るのか、さらにその後何メートル下ってその次は…と、先のさらにその先の様子を予測できる。
実は自分の山歩きの原点は中学生のときに覚えた地形図の読図からだ。それ以来、山と地形図は切り離せなくなり、どんな近くの山でも手放せないアイテムとなっている。だから延々と続くアップダウンも案外と楽しみながら歩いている。一休みするタイミングも時間というよりも地形図から先の様子を読み取って、あのピークを越えた所にしよう、この先は急傾斜が続くのでその手前で腰を下そうか、などなど地形図と対話しながら歩いているといっても過言ではない。もちろん重荷を背負って登りが続けばバテバテにもなる。それでもまだ見ぬこれから先の様子を想像する楽しみは何にも代えがたい。
いつの間にか自慢話になってしまった。本筋に戻そう。ここ障子岳の周辺も鹿などの採食からか裸地化が進んでいるが、ここでとんでもない物を見てしまった。なんと、1,700メートルを超える九州山地の奥地に立派な鉄製の柵が設置されているではないか。稜線付近の植生保護のために一部を囲っているのだが、登山者はこの柵の戸を開けて中に入り、わずか数十メートルその先で再び戸を開けて出て行くという何ともやりきれない行動をすることになる。もちろん出入りの際には必ず戸を閉めることは言われなくても分かるが、この立地からして巨額の費用を費やして設置したのだろう。注意書きには「希少な植物や多様な植生を保護するため…」とあった。しかし、この広大な山地のほんの一部分、何十万いや何百万分の一を囲って鹿の立ち入り禁止区域にしてどれだけの意味があるのだろうか。そんな思いをしながら歩いていると、むなしく朽ち落ちた「鳥獣保護区」という鉄製の看板を見つけた。うーん“保護”ね~。

1,700mを超える九州山地の奥地というのに立派な鉄製の柵が…

むなしく朽ち落ちた 「鳥獣保護区」の看板