2025年09月16日(火)

コラム・エッセイ

祖母~傾山縦走記㉚ 《山歩きなんて全て自己責任》

おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修

 歩き出して約4時間。この祖母傾山縦走路で一番標高の低い尾平越(1,170メートル)に着いた。距離的には本日の行程の約半分だろうか。ここの真下には大分県の尾平地区と宮崎県の高千穂町を結ぶ県道が尾平トンネルで貫通している。30分ほどでこのトンネル入り口にたどり着き、てくてく車道を歩けば里に下れるエスケープルート(逃げ道)として使える。これから先には傾山までこれといった逃げ道がないので荒天時や体調不良の際にはありがたい存在となるのだが、もちろん今は選択肢にない。


 古祖母山から高度を下げながら周囲がだんだんと明るくなり、ガスで数十メートルだった視界がだんだんと薄くなってかなり遠方まで見通せるようになった。ここ尾平越に着くころには対岸の数キロ先となる昨日歩いた障子岩尾根の山腹を望めるほどになった。同時に雲の間から青空も見え隠れする。


 昨日以来ガスに包まれて上空の様子は全くうかがい知ることができなかったが、どうやら雲がかかっているのは標高1,200メートルから上だけのようだ。標高の低い尾平越はこの雲の下になるのと、そもそも雲がかかっているのは稜線付近だけなので遠方の上空の青空が見える。振り向いて下ってきた方を見ても、この先の進む方を見上げても雲の中だ。そういうことだったのか。昨日の雨はともかく、ラジオではきょうは天気が回復する予報だったが、濃いガスの中では霧雨状態。良くて濃霧だ。久々に見る青空や陽に照らされて鮮やかに映える色付き始めた木々の葉色に気持ちも少しは華やぐ。


 ところで「山歩きに必要な物を上げろ」と言われれば、あれもこれも必要だときりがないのだが、絶対に無くてはならない物の一つが水だ。日帰りで片道1時間程度なら500ミリリットルもあれば真夏でも何とかなる。しかし、ほぼ終日の行動でしかも泊りがけとなると最低でも3リットルは必要だ。行動中に飲む水はもちろん、夕食や朝食などに要する水や翌日の当面の飲料水。さらには保険としての余力もほしいところだ。今朝、祖母山9合目小屋の近くの水場で持っている水筒などの最大容量3.5リットルを詰めてきリットル。目的地の九折避難小屋近くにも水場はあるようだが、必ず取れる保証はない。なければ今ある水で一晩過ごし、翌日の次の水場までやり繰りする。飲み水をケチって脱水になってしまっては本末転倒だし、だからといってがぶ飲みしては後がつらい。必要以上に背負えばくたびれるのでその兼ね合いで水の量を決める。これは人それぞれで決まりなんてなく自己責任で決定だ。そう。山歩きなんて全て自己責任なのだ。


 ガイドブックの地図には尾平越に水場の記号があり、目の前に「水場」を指す看板もあるが自分の目で確認するまでは信用できない。もしあれば遠慮なしにしょっぱくなった顔も洗えるし。汗のしみ込んだタオルも洗えるぞ。

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