2025年09月16日(火)

コラム・エッセイ

今年の初登山2020④

おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修

 前回、今年は山に雪が少ないことに少しふれた。読んだ人から「じゃあ、いつもならどのくらいかね?」と聞かれた。普通の感覚なら積雪量が気になるところで、2メートルとか3メートルといえば人が行くところではないと思われそうだが、冬山で問題なのはそれよりも風のほうだ。真冬でも偶然に無風快晴の時は体力の部分は別としてルンルン気分で歩けるが、いったん風雪の吹きすさぶ場に身を置けば「命」を意識することもある。これがまた「Mっ気」がある山歩き愛好家にとっては快感となるから始末が悪い。

 冬の伯耆大山は日本海から吹き付ける強烈な季節風と湿雪が特徴だ。特に8合目から上の頂上台地は風を遮るものが全くない。風雪時などゴーグルなしでは痛いほど顔に雪が叩き付け、とてもまともに顔を上げて歩けない。この湿雪というのが始末が悪く、ゴーグルのレンズに粘りついて全面が真っ白になって視界ゼロとなる。そうなる前に手袋の指先でゴシゴシと書き落とす。一時は部分的に視界が確保できるがすぐにリセットでこの繰り返しとなる。

 それも追いつかずにいっそのことゴーグルを外し、顔を風下側に向けて一瞬だけ進行方向を確認して数メートル進み、また一瞬だけ顔を上げては確認という何とも危なげな歩き方をしなければならない。もっともこれは何度もここを歩いてある程度の土地勘があるからできることで、初めての山で視界のない風雪となると、その山を熟知している人と同行するのなら別として、いくら「Mっ気」があっても一人では恐ろしくてとても歩けない。

 今年は正月の大山としては穏やかだった。とはいえ、頂上付近は風もそこそこ吹いて立ち止まるとたちまち震え上がる。そんな時にとてもありがたいのが鉄骨造りの頑丈な頂上避難小屋の存在だ。少々の暴風雪ではびくともしない。ところが昨年から鳥取県が改修工事を行っている最中で、秋までは立ち入り禁止だった。しかし、冬季は登山者の安全に配慮してか一部が開放されている。ありがたいことだ。

 例年ならこの避難小屋はほぼ雪に埋まっていて、入口までスコップで掘り進むが今回はストレートだ。小屋の中も例年なら明り取りの窓が雪に埋まってヘッドランプを照らさないと見えないほどの暗闇となるが今回は明るい。ただ、工事の最中で資材などが置かれていて狭いし、床も撤去されていてコンクリートの土間に直に腰を下ろすことになる。もちろん暖房も何もないが、それでも風雪を遮ってくれる存在はありがたい。

 さっと持参のガスバーナーでお湯を沸かして早めの昼食とする。いつも感心するが、同行のメンバーは口では好きなことを言っているが、自分流の作業を要領よくこなし見ていて心地よい。弁当の人、おにぎりの人、カップめんの人も各人の流儀で準備から食後のコーヒーや片付けまで20分もあれば済む。

真冬でも無風快晴の時はルンルン気分で歩けるが…。

例年ならこの時期はほぼ雪に埋まっている

資材などが置かれていて狭い=それでも風雪を遮ってくれる存在はありがたい

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