コラム・エッセイ
親不知を目指す⑱ 「それでも高いと思いますか?」
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修山にもいろいろルールがある。北アルプスなど国立公園内の山となると、それなりの決まり事があって、なかなかやかましい。特にキャンプに関しては、登山者はどこでも好きなところにテントを立ててよいわけではなく、キャンプ指定地以外では禁止だ。
唐松岳周辺には唐松岳頂上山荘という山小屋が管理するキャンプ指定地がある。テントを張るには山小屋で受け付けをして料金を払わなければならない。
たしか昨年の料金は一人1,000円だったと思う。人によってはテントを張るだけなのに高い!という声も聞く。しかし、考えてみれば標高が3,000メートル近い厳しい環境下でテント場を維持管理するのは並大抵のことではないはずだ。冬には大量の雪に埋もれるだろうし、雪崩や落石だってある。その復旧もすべて人力だ。それともっと有り難いのは、受け付けの際、どこから来てどこへ行くかを書いて残せることだ。
山に入る前には登山届を出すのはもはや常識だが、今回のように計画を変更して先に進めなかった場合、翌日に後れを取り戻せればよいが、そうでなければ当初の計画は無効になったようなものだ。万が一事故でも起こして予備日を過ぎても下山できなかったら、家人は警察に遭難したのではなかろうかと連絡をする(はずだ…)。その時に山中での行動履歴が残っていれば捜索の範囲も絞られて効率が良い。
山登りなど、あえて危険な場所に行く不安全行為そのもので事故のリスクも高い。いくら山歩きが自己責任の遊びとはいえ、あわや遭難となると、今の日本では警察をはじめ現地の遭対協も知らぬ顔ができない仕組みになっている。彼らにできる限り無駄なことをさせないための資料ともなるキャンプ場の受付だ。それでも高いと思いますか?
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話題が飛んでしまった。くだんの唐松岳のテント場は小屋の西側(富山県側)急斜面に、それこそ段々畑のように整備されている。カタログ値では30張りの設営が可能となっているが、もし、テント場が満員御礼となったら、かなり下らなければならない。その分を翌朝は登り返すことになるので、可能なら程々の場所が良い。
今日のテント泊の先客は僅かで貸し切り状態だが、できるだけ他のテントから離れたい。とは言えあまり下りたくもない。さっきまでいた唐松岳を見上げることができる3段目あたりで手を打って早速テントを立てる。
外で荷物を解いてマットや寝袋を取り出してまずは寝る準備。次にお湯を沸かして夕食の準備をする。合間に眺める山々の表情もよい。どっしりとした五竜岳。雲海の先の剱岳も見事だ。一時も飽きさせない。午後6時。剱岳の北方稜線の山に夕日が沈み一気に冷えてきた。カッパを羽織り、残照に浮かぶ山々から目が離せない。
唐松岳のテント場は小屋の西側急斜面に段々畑のように整備されている
さっきまでいた唐松岳を見上げるところに テントを立てた
夕食準備の合間に眺める山々の表情がよい:どっしりとした五竜岳
午後6時 劔の北方稜線に夕日が沈む
