2025年09月16日(火)

コラム・エッセイ

祖母~傾山縦走記㉖ 《山歩きの醍醐味とは》

おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修

 祖母山からの下りは急な岩場から始まる。一応は固定ロープやハシゴが設置されている。ただロープもいつ更新されたものかわからないほど変色しているし表面が毛羽立っている個所もある。ハシゴもかなりくたびれているし番線で仮設のような固定方法では100%頼り切るには心もとない。だからといって「石橋をたたく」ほど慎重になり過ぎてしまうと先には進めない。

 晴れて乾いていればそれほど難度の高い岩場ではなくロープやハシゴがなくても何とかなりそうだが、雨で濡れた岩となると話は別で靴についた泥がさらに滑りやすくするのでどうしてもロープなどに手が行ってしまう。全体重を預けるのは論外としても、気持ち的にはこのロープは絶対に安全で切れることはないと信じるしかない。

 そもそも山歩きなんて安全とは真逆の行為だ。「どうしてそんな危ないところにしかも1人で行きたがるのか分からない」とよく言われる。

 今のご時世ではとにかく安全第一で仕事中にケガをするなんてとんでもないことだ。平屋の屋根を補修するのにもヘルメットや安全帯の装着は当たり前で、ハシゴをかけて曲芸まがいの作業はご法度だ。ちゃんと立派な足場を組むのが当たり前で、本来の屋根の作業をするより足場の運搬や組み立て撤去のほうに手間がかかっているのではと思うことさえある。そのくらい世の中は安全に気を使う。

 最近では山でもヘルメットの着用が一般化しつつある。効用としては転んだときや落石から頭を保護することだろうか。落石も小石ならなんとかなるが抱えるような大きな石ではどうにもならない。

 昔のことだが、飴玉ほどの小石を先行者が落として肘に当たったことがある。その衝撃たるや骨が砕けたかと思うほどだった。これが頭だったらとぞっとした。自分が足を滑らせて落ちたのならそれだけのことだが、人の落とした石で事故というのは悔しいではないか。以来落石のリスクの高い山にはヘルメットは必需品となった。

 先日、富士山で落石に当たって亡くなったというニュースを聞いた。運が悪いと言えばそれまでだが、山には一つ間違えれば命に関わるような要素が四方八方にある。日が暮れてからは歩かない。ガスで見通しが悪い時も歩かない。雨が降ったら歩かない。急な岩場も通らない。細い道も歩かない。雪山なんて論外。そんな山歩き?をすれば事故はないかもしれない。

 でも山歩きの醍醐味は、優しく穏やかだけではない自然と対峙できる力をつけ、それがどれだけ通用するかを確かめに行くことのような気がする。もちろん人それぞれだが…。

 一気に200メートルほど標高を下げ緊張の岩場から尾根沿いの縦走路となる。視界の無い中を数十メートルのアップダウンを繰り返し天狗岩の分岐に着いた。走れば2時間ほどで尾平の集落に下れる。もちろん前進だ。

祖母山からの下り=一応は固定ロープやハシゴが設置されているが…

ここから走れば2時間ほどで尾平の集落に下れる。もちろん前進だ

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