コラム・エッセイ
防災はまちづくり? 《秋の周南市総合防災訓練に向けてⅦ》
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修この18日に須金で開かれる周南市総合防災訓練は、電話もインターネットも不通という想定。もちろん携帯電話もつながらない。しかも須金に至る幹線道路は土砂崩れのために完全に不通となり、いわゆる”陸の孤島”となるというものだ。
そうなると地区内の情報収集やそれを外に向けて発信するには原始的にのろしを上げるか手旗信号を使うかしか手段がない。
ところが須金にはアマチュア無線というツールがある。過疎が進み、人の数も400人足らずとなってしまったが、アマチュア無線家の数は20人を超えている。実に人口の5%以上が有資格者ということになるのだ。
このアマチュア無線は電波の出力も大きいし、別にアンテナを立てることができるので、相当に遠方まで電波を飛ばすことができるのが強みだ。それに周南市の各自主防災組織には簡易無線機が配備されているし、消防団も簡易無線機を持っている。簡易というだけに資格が不要な分、出力が小さく、山間地では遠距離の通信はできないが、特性を知っていれば十分実用になる。
今回の訓練では須金の強みの一つでもあるアマチュア無線をベースにし、それを自主防災や消防団の無線機を積極的に絡めて横の垣根を取り払った連絡体制を作ろうとしている。世間でいう情報の一本化、共有化を目指している。
実はこの取り組みは毎年、須金内での防災訓練でしてきた。それを市の総合防災訓練の柱にしようと昨年の暮れから議論してきたが、ようやく形が見えてきた。特にアマチュア無線は周南アマチュア無線防災ネットワーク、通称「周南防災ハムネット」の協力があってのことだ。
今回の訓練では須金の被災状況を電波で市役所の災害対策室まで伝えようというものだが、中継や市庁舎でのオペレーターなどを全面的に支援してもらっている。本当にありがたいことだ。こうした地区を横断した市民レベルのつながりが防災でいう共助の幅を広げているし、公助の補完もしていると思う。
それに携帯電話全盛の時代にアマチュア無線などという少々“オタク〟の趣味を持つ人たちは「無線」というだけで目の色が変わる。先日のことだが、自主防災の簡易無線機で市の本庁まで何回中継したら伝わるかやってみよう、と動いてくれた。
これを“オタク〟用語で伝播テストというが、菅野ダムの駐車場のあの位置なら受信はできるがもう1メートル動けば次に届くが…。などとピンポイントで中継場所を探るなど、普通の人ならまずあきらめるようなやっかいな芸当も、手間を惜しまずにこなしてくれる。
ただただ、感謝。

須金にはアマチュア無線という情報伝達ツールがある

自主防災や消防団の無線機を絡めた連絡体制を作ろう
