コラム・エッセイ
防災はまちづくり? 《防災訓練が本番になったⅡ》
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修周南市須金には小学校や市民センター、郵便局といった公共施設のある中心集落以外に10を超える自治会がある。かつては小学校の分校があり、相当数の住民が暮らすにぎやかな集落もあったが、今は世帯数も減って数軒単位のところも多い。しかも高齢世帯となれば、一応は自治会の名前はついてはいるが、自治機能など期待できない。
そんな集落に暮らす人たちの見守りや安否確認を民生委員や福祉員、もやいネットといった仕組みが担っているが、こと、災害となると事態は変わってくる。「ミイラ取りがミイラになる」の例えがあるが、今回の台風のように停電や土砂災害などがセットの状態では、気軽に電話連絡がだめなら現地に行ってみようではすまされない。
結果として民生委員や福祉員が消防団や自主防災メンバーの車両に同乗し、道路状況の確認と同時に高齢者世帯を訪問して安否確認を無事にすませた。幸い、死傷者を出すほどの被害はまぬがれたことを確認した。
午前中でどうやら風雨の峠は越えたようだ。午後1時から第2回の対策会議を開く。幹線道路の遮断と、一時的ではあったが一斉停電と携帯電話もつながりにくい状況もあったし、一部の集落では懸念していた電話やテレビ、インターネットなど通信インフラが完全に途絶する事態となり、訓練の想定がそのまま現実となった緊張の1日だった。
須金市民センターには9世帯が自主避難したが、停電が長期化すれば帰宅後の生活に支障があり、避難も長期化するのではという心配の声も出た。もちろん、近所をひと回りすれば当面の米やしょうゆくらいは分けてもらえようが、いくら自主避難とはいえ、今後もそれを前提にするわけにもいかない。食料などの備蓄も課題だ。
台風通過後、消防団が再パトロールすることでひとまず対策本部は解散することにした。
この経験は課題も多かったが、成果もあった。それは秋の訓練で現地の災害対策本部を立ち上げる準備をしていたことで大きな混乱なく指揮命令系統が一本化できたことかもしれない。
市民センター(支所)という地域の中核に関係者が参集し、情報を共有しながら行政職員(支所職員)がすること、消防団の組織と機動力でできること、民生委員や福祉員などが持つ懸念、さらには通信インフラがダウンした状態でアマチュア無線の活用など、各組織の役割が融合した取り組みになったことだ。別れ際に「訓練が本番になったのう」とうなずきあった。
それから1週間。いまだに完全に遮断されたままの国道は全く復旧の見通しは立っていない。須金の住民は不安と不自由を強いられているが、追い打ちをかけるように大型で非常に強いという台風25号が接近してきた。進路予報から3日前には最接近する前の6日朝に対策本部の立ち上げを決定した。

民生委員や福祉員が消防団らの車両に同乗し、高齢者世帯の安否を確認する

災害対策本部の準備をしていたことで指揮命令系統が一本化できた
