コラム・エッセイ
《周南市防災シンポジウムをのぞいてきた》
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修13日に周南市文化会館で市防災シンポジウムが開催されるというのでのぞいてきた。講師は東京大学大学院特任教授の片田敏孝さん。「釜石の奇跡」の立役者で、防災教育の第一人者として何度か新聞などで名前を見たことがあり、何とか都合をつけて話を聞きたかった。
タイトルが「荒ぶる自然災害に地域・行政で向かい合う」とあったので、何となく話の方向性というか、話の着地点みたいなものは想像できた。とはいうものの、子どもが対象の防災教室ならまだしも、大人対象のシンポジウムとなれば肩書からして別世界の先生の話は浅学の田舎者には難解と覚悟はしていた。
結論から言おう。よく理解できたといえばうそになるが“なるほど〟とうなずける講演ではあった。豊富な知見からかその語り口調は高速でマシンガントークそのもので、一つのセンテンスを頭で反芻(はんすう)する最中に次の話題に移っている。
後追いにも限界があるので、正直いって脳みそが悲鳴を上げる手前だった。つくづく頭の回転の悪さを思い知ることにもなったが、なかなか良い刺激をもらった。
長くなるのではしょるが“避難の三原則〟という話があった。原則1「想定にとらわれるな」、原則2「最善をつくせ」、原則3「率先避難者たれ」というものだ。
とりわけ原則1については、ハザードマップなんて役に立たないし、役所の言うことは当てにならないなどと主催者でもある市長を前にしての発言だった。
東日本大震災では津波の予想到達エリアを大きく超えた場所にまで被害が及んだ。よく言うところの「想定を超えた」「過去に例がない」ことが起きたのだ。考えてみれば地震だけでなく、大雨や台風、猛暑など、ここ最近の自然災害はほとんどが「経験したことがない」ものになってきている。
ハザードマップも頻繁な更新が必要なんだろうが、追いつくわけがない。とりわけ豪雨災害などひと山越えるかどうかのわずかなズレが命運を分けることをつい先般、見たばかりだ。役所もピンポイントで警報や指示が出せるわけがないし、その責任を問うてもしかたがないというのだ。
別に役所の存在が無用などとは思ってもいないが、住民自らが危機感を持つ必要性はある。そして自分で情報を得る努力はすべきだ。今はテレビのデータ放送やインターネットから多くのデータを簡単に得ることができる。
もう一つ、大いにうなずいたのが地域のコミュニティーが崩壊し、共助力が衰えているということだ。
昔は頻繁に起きる自然災害を地域の力で復旧、復興する必要性があったが、久しく穏やかな年月が続き、それが不要になったというのだ。もう一つ付け足せば「我田引水」が戒めに例えられるように、農耕社会ゆえの共同体が崩壊したことも一因かもしれない。
片田先生は最後に今こそ防災を軸足においたコミュニティー再生が求められているという話をされたのが強く印象に残っている。

講演する片田教授
