コラム・エッセイ
祖母〜傾山縦走記⑨ 《消費は美徳です》
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修大汗をかきながらぐいぐいと高度を稼ぐ。風のない樹林の中で景色なんて何も見えない。ただただ足元だけを見ながら黙々と歩く。ただ救いになるのは腕時計に内蔵されている高度計の指示が面白いように上がることだ。数千円で買った安物ではあるがもう5年は使っているが調子が良い。
少し脇にそれるが、たまに山頂で出会う人達の会話を聞いていてもったいない使い方をしているなと思うことがある。最近は山歩きで高度計機能がついた腕時計を持つ人が増えているが、そもそも何のために持っているのか分からない使い方をしている。舶来のうん万円もするブランド品を持つ人が「この高度計は役に立たん!頂上で見たら50メートルも狂っている」と嘆いているのだ。せめて説明書を見直して来て…。と言いたいけれど、おそらくあまりにも多機能すぎて説明書も分厚くて必要なくだりの部分を探すのも大変なんだろうなあ。
この手の高度計は気圧から高度を換算しているのでその日の天気や気温によって100メートル程度は違ってくる。だから頻繁に校正作業が必要なのだが、そのためには地形図が読めないと難しい。山中で地形図に現れるピークやコル(鞍部)、谷などを確認した時には面倒臭がらずに等高線から標高を読み取って高度計の指示値を修正しなくてはならない。ついでに言うと舶来の高級な品はあまりにも機能が多すぎてこの校正作業に手間取る。ボタンを何度も押さなくてはならないので面倒だし時間もかかる。また、ある御仁はこの高度計は1メートル単位で高度を表示してくれると自慢しているが、しょせん地形図の等高線間隔は10メートル単位だからそれだけの精度を求めることに意味はない。
高度計は地形図とセットで持つものだと信じている。地形図の読図にコンパスは必携だが高度計はなくても構わない。ただ、ホワイトアウトした時や樹林の中で視界がきかない時などは自分が進んでいる方向と傾斜に高度計で得たデータを判断材料に加えることで地図読みの精度を上げることはできる。無くてもいいけれど使いこなせれば便利で助かるという物かもしれない。
そこまで頼るのならいっそのことGPSを片手に歩けば地形図は不要ということになるが「電池が切れたらはい終わり!」という空恐ろしい物に頼り切るのはダメだ。やっぱり山に入るときはちょっと頭と勘を働かすというのが良い。
うん万円の高度計が買えない貧乏人のひがみ根性で長々と小理屈をこね回したが消費は美徳です。社会にお金を回すことはいいことです。頂上で50メートルも誤差が出る高度計なんて目の前の貧乏人にくれてやればいいのです。毎年のように最新型が発売されるのですぐに買いに行って下さい。
仕切り直しで歩き出してから2時間。急傾斜の山腹からようやく傾斜の緩んだ尾根に上がった。ところが下から見上げて覚悟はしていたがまるで雲の中だ。

「愛用の高度計=安物でも調子が良い」

「急傾斜の山腹からようやく傾斜の緩んだ尾根に上がった。まるで雲の中だ」
