コラム・エッセイ
穏やかな日々…
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修勤めを辞めて自称農林業を標榜しているが、諸々のしがらみもなくお天道様と相談しながらの生活というのは精神衛生上非常に良い。体が資本で天気に左右され実入りは少ないが、ストレスという単語は頭の辞書から消え穏やかな日々を過ごしている(た)。
つい先日の午後、買い物のため車で出かけたが、ちょうど幼稚園のお迎えの時間と重なったようで、出入りのために前方の車が何台か停まっていた。運転しているのは若いお母さんもいるし、共働き世帯のためかおじいちゃんらしき人もお迎えだ。
少子高齢化社会などといわれて久しいが、今の世は圧倒的に我々年寄りが多く子どもは社会の宝だ。国も少子化対策でいろんな施策を考えているようだが、金を配るだけでは根本的な解決にはならない。家族の協力もだが社会で子育て環境を作りあげなければならない。
そんなことを考えながらお迎えの車の出入りを微笑ましく眺めていた。当然、後方に車が何台か並ぶのをバックミラー越しに確認していた。道路は片側一車線でセンターラインは黄色で「追い越しのための右側部分はみだし通行禁止」だ。
例え対向車がいなくても前方の停止車両をセンターラインをはみ出して追い抜くことはご法度だ。世の変遷とともに交通法規もどんどん上書きされているが、これは不変の決まり事だ。ましてや幼稚園の送迎時に停まる車がいれば愚直に守って当然のことだ。
せいぜい数十秒のことでさほど気になる時間でもないが、お迎えの車が出て待っていた車が幼稚園に入ったので発進した。同時に後方に停まっていた大型のダンプカーがセンターラインを越えて追い抜いてきた。
こっちとの距離は僅か10センチほどで、目線はダンプカーのタイヤの高さなので至近距離では見上げるような巨大なものが追い抜いたことになる。こちらは軽トラ。相手は大型ダンプで接触したら大惨事になる。慌てて速度を落として事故はまぬがれたが、一瞬これで人生終わりかなと思うほどの恐怖だった。
そのダンプが100メートルばかり走って止まったので近寄って危なかったことを伝えると、運転手が下りてき「わりゃあやるか」と手で胸を突いてくる。「わりゃあ始末しちゃる」という。
始末とは何かと聞くと「始末は始末いや」要は暴力で抑え込むということだ。黄色のセンターラインの意味を伝えても聞く耳をまたず。「警察に言えーや」というのでそうしようというと「そねーな暇はない」と威かくと暴言の限りを吐いて立ち去った。
腹立たしいということを超えて悲しくなった。捕まらなければいい。しかも幼稚園の前でだ。明らかな脅迫行為で相手を黙らすというという身勝手な行為を平気でする大人が身近にいるのだ。こんなことがまかり通る日本に明るい未来はあるのだろうか。穏やかな日々を送っていたが今は悲しくてやりきれない。

追い越しのための右側通行禁止の標識
