コラム・エッセイ
「雪山賛歌」
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修今年の冬は例年になく寒い日が多かったような気がする。特に1月の後半は特別だった。水道管の破裂や給湯器破損の被害の話をあちこちで聞いた。我が家でも給湯器のパイプが凍りしばらくお湯が出なかった。
まあ、この程度は多少の不便はあっても生活に困るわけでもなく、大地震や戦禍で凄惨な思いをする人達のことを思えば大したことでもない。冬の風物詩と思ってやり過ごそう。
そんな寒さが続く中、所属する山岳会の米子登攀倶楽部から恒例の大山の冬山パトロールへの参加依頼があった。雪山シーズンの休日に鳥取県内の山岳会が輪番で鳥取県警のおまわりさんと一緒にパトロールと安全登山の指導をするというもので三日の予定が組んである。
さすがに全日程は無理でも一日でも参加しようと早くから日程調整してぼちぼち準備した。
この3年はコロナで県外移動を自粛していたが、昨年の秋から恐る恐る大山に足を向け、山の息吹を感じながら感覚を懐かしく取り戻していた。山仲間との再会と尽きない山談議はブランクを忘れさせてくれたが、真冬の大山となると別格で体力や耐寒力、山勘などに多少の不安があったことを白状する。
それと少々無謀ではあるが、春秋シーズンには大山や九重の山などを一緒に歩いている雪山経験ゼロの須金の五郎丸農園園主の高橋君も同行することになった。体力的には一回りも若いしランナーでもあり心配はしていないが、冬の大山は独立峰だけに風がやたらと強く過酷な状況になることは体感済で、少しの気の緩みと装備の不備が凍傷や低体温に陥り遭難に至ることもある。
必要最低限の装備と冬山のノウハウは必要だ。ピッケルなどは予備品を貸せるがアイゼンだけは靴に合うことが大前提だし、そもそも冬用の登山靴がから揃えなければ。厚手のグローブも濡らしたり強風で飛ばされたら命取りなのでバックアップが必要だし、目出し帽やゴーグルも必携だ。
傾斜が緩ければストックもバランス保持に便利だがスノーバスケットに換えなければ雪にもぐりこんで支えにならない。大枚をはたいてそれら一通り買い揃えてもらった。
そして当日。本命のパトロールのことは別の機会に譲るとして、朝の登山口こそ氷点下だったが標高を上げても気温はどんどん上がり、この時期としては珍しいほど暖かく拍子抜けの感もある。
しかも微風快晴でジャケットなんて要らないしゴーグルも出番はないまま汗をかいて山頂に立った。
昔ダークダックスの「雪山賛歌」をよく歌ったが何番目かの歌詞に「荒れて狂うは 吹雪か雪崩俺達ゃそんなもの 恐れはせぬぞ♪」のフレーズを想像していただけに肩透かしを食らった。
でも、そのぶんしっかりと余裕で険しくも白く輝き連なる壮麗な雪の大山を眺めながら「山よさよなら ご機嫌よろしゅうまた来る時にも 笑っておくれ〜♪」と続きの歌詞が頭の中をよぎった。
やっぱり山はいい。高橋君。大枚はたいて買い揃えた山道具だ。また行こうぜ。

パトロール出発前:大山の駐在所前で記念写真

雪山デビューの高橋君:気温も高く微風快晴。拍子抜けの感もあるが…
山頂から険しくも白く輝き連なる壮麗な雪の大山を眺める。やっぱり山はいい
