2025年09月16日(火)

コラム・エッセイ

「年寄りの責任か…②」

おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修

 今年の梅雨の大雨も各地で思いもよらぬ爪痕を残しながら列島を縦断していった。報道で繰り返し耳にする「観測史上初めて」というフレーズも常套句となり今さら心も動かない。

 窓を閉め切っていてもゴーゴーと激しく屋根に打ちつける雨音を聞きながらいつ停電するかとヒヤヒヤしながら雨雲レーダーで真っ赤な塊が通過していくのを追う。

 漸増していく河川水位やダムの貯水率、放流量のデータを眺めながら危機感というよりはこれから先の世の中どうなっていくのかが心配だ。年々激甚化する自然災害が頻発し次世代の人達が安心して暮らせる余地を残してくれるのだろうか…。温暖化の片棒を担いだかもしれない一人として少々の責任も感じる。

 罪滅ぼしにもならないが、これも“年寄りの責”と過疎高齢化が進み担い手がいなくなって荒れるに任せていた農地を少しでも復元維持し、里山の原風景を取り戻そうと荒地に牛を放牧している。ありがたいことに牛は基本草食なので山野に茂る草と水さえあれば元気にしてくれる。ただ、この有り余る草も春先から秋口限定で冬は枯れてない。

 本職の畜産農家であればストックした干し草や穀物などで食いつなげて春を待つことになるが、都合よく夏場の持て余す草だけ牛に食わせて始末してもらおうという魂胆でも救いの主がいる。

 実はこの牛を放牧して“舌刈”させる取り組みこそ「山口型放牧」という県の制度で、牛を飼っていなくても牛を期間限定で貸し出す仲介をしてくれるし、畜産農家にとっては放牧に出している期間は管理の手間が省けるという双方にお得な仕組みだ。もっとも借りる側としては牛が帰っていく日まできちんと見守る責任がある。

 飲み水の確保はもちろん放牧予定地から牛が逃げないように牧柵を設置管理しなくてはならないので、そこそこの手間はかかるが牛達の仕事ぶりと比べれば大したことではない。

 当初の十数年ほどは我が家の裏山専属で放牧して大いにその“舌刈”効果を享受していたが、近隣の担い手がなく荒れた農地が気になり、転婆を焼いてこちらも放牧すればきれいになるのではと昨年から2か所での放牧を始めた。

 本当は牛が2セットいれば同時の放牧で理想なのだが、それが叶わずひと月おきのいわば牛の2拠点移住生活をさすことになった。

 隣接地であれば柵の細工で追っていけば移動も手間要らずだが、何せ須金の町を挟んで数百メートル離れているので引っ越し作業もひと手間がかかる。

 先日、ありがたいことに県の農林事務所や関係者の数名に応援に駆け付けてもらい無事に移動作業が済んだ。牛達にとってみればえらい迷惑な話で、せっかく慣れ親しんできた放牧地で悠々と草を食んでいたところを追いかけられ、鼻輪にロープをくくられて訳の分からぬまま町中を引き回される。

 すまないねえ。言葉は通じないかもしれないけど感謝してるよ。有難うね!

農林事務の職員など数名がかりで牛を追って捕まえる

鼻輪にロープをくくられて須金のまちを引き回されろ。「すまないねえ。本当は感謝してるよ有難うね」

「すまなかったねえ。感謝してるよ!」

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