2025年11月09日(日)

コラム・エッセイ

「我が家に牛がやってきた2024」

おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修

 2024年5月13日発行の本紙コラム中島進氏の「一言進言」の見出しは「15年後の須金地区の人口は108人に」だった。この数字を多いと見るか少ないと見るかだが、私的には15年後でも108人(も)いるのか…と感じている。

 氏は文末に『従来の常識を打ち破って、革命的なプランを作って欲しいものだ。きれいな言葉を並べた計画はもういらない。子どもを増やし、若者を増やすために行政総動員体制を求めよ』と結ばれているが、まさに革命でも起こさない限り逆転劇は起こりそうもない。

 今から半世紀以上も前の昭和30年代後半から40年代前半に感じていたまちの活気や現役世代の威勢の良さは、戦中戦後の混乱期を生きるためにがむしゃらに働き、高度経済成長の波に乗り遅れまいと誰しもが躍起になっていたからに他ならない。同時にむらからまちへ。地方から都会へと、より豊かな暮らしを求めて故郷を後にする人も多かった。特に若者はより条件の良い職を求めて出ていくのが当たり前で、すでに人口流出のうねりは始まっていた。

 唱歌「故郷」の3番目「志しを果たして いつの日にか帰らん」ではないが、たしか昭和の終わりから平成の初めころだったと思うが、過疎も他人事ではないと感じ始めていたころ、盆暮正月にはまちに出て行った多くの人達がピカピカの高級そうな乗用車で帰省し、家々の前に成功者として競い合うかのように停めていたのを思い出す。

 彼らも老齢期となり帰る家に住む人もいなければ足は遠のきかつての暮れの風物詩もひとつ消えた。かくして我が家の子供たちも家を出てジジとババの高齢世帯だ。無用の長物と化したやたらと大きな古い家も小さな隠居小屋を残して先ごろようやく始末が済んだ。この地で子子孫孫未来永劫続くのは夢のまた夢か。

 情けない前置きが随分と長くなってしまった。毎年この時期恒例の話題となるが、つい先日我が家に牛がやってきた。今年は4頭同時だ。牛達に“舌刈り”してもらうのが目的でかれこれ15年目になる。

 人が減るのに反比例してかつて営々と耕され守り続けてこられた田んぼや畑などが荒れ続けていく。これもご時世なので仕方がないといえばそれまでだが、子供ながらに美田と眺め、栗や柿のなる裏山が無残に背丈以上にはびこるカヤやカズラ、セイタカアワダチソウに覆われていくのが耐えられない。

 何とかしようと草刈り機で奮闘するも草の成長のほうがはるかに優勢で気力も萎える。そんな時に山口県の事業で「山口型放牧」という荒廃農地に牛を放牧して農地を再生維持する取り組みと出会い大いに恩恵に預かっている。

 餌やりなどは不要で飲み水さえ確保すればさほど手はかからない。もちろん放牧地の外周に電気柵を張ってその周辺の草刈りなどの定期的なメンテナンスは要るが、その手間以上の成果は実証済みで、今年は2か所に2頭ずつ同時に入牧し秋までの数か月間牛達との共同作業だ。

今年も我が家に牛がやってきた。かれこれ15年目になる

放牧予定地は小学校の近くだ:今時は牛に触れるなんて貴重な体験かもしれない

かつての美田再生を夢見て牛達と秋まで共同作業だ

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