コラム・エッセイ
「やっぱり山はいい!」
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修時が経つのが本当に早い。気が付けばもう6月で今年も半年が過ぎる。つい先ごろまで寒さに震えていたが、早々と熱中症の話題を聞く。
かつて大先輩方から「体が動くうちにやりたいことをやっちょかんにゃあつまらんど」と何度も聞かされていたが、自分にはまだまだ先の話と聞き流していた。気が付けば十分意識しても早くない歳となった。健康寿命といわれる歳も目前だ。
終活もいつまでも先送りができないと、昨年暮れから古い家の解体に向けて片付け作業に追われる日々だったがようやく目鼻がついた。しかしその間に手薄になっていた諸々の作業が山積している。
先日もトラクターの作業機が不調となり作業を中断した。実は昨シーズンに機械の異音に気付き点検してメンテナンスしなければと思っていたがドタバタでその余裕がなく、今期そのまま使い始めての結果だ。
シャフトのベアリングのグリス切れが原因だが、その修理は分解に半日。部品発注して届くまで2日。ベアリングを交換して組付け試運転に半日と結局四日間作業を中断することになり予定は大狂いだ。まさに負のスパイラルに巻き込まれている。
それでも無理やりに時間をとって伯耆大山行った。須金の梨農家「五郎丸農園」園主の高橋君とはランニングや山歩きを一緒にしていて二人とも鳥取県の山岳会「米子登攀俱楽部」の会員でもある。大山には四季を通じて何度も一緒に歩いてきたが、三鈷峰やユートピアから親指ピークを越え野田ヶ山を踏んで大休峠に至る縦走コースは未体験という。
それなら案内しようと6月1日午後に出発。麓でいつも常宿にさせてもらっているN氏の山小屋で前泊し翌早朝の日の出前から歩きはじめる計画だ。
折しも大山夏山開祭と重なり小屋に着いた時には登攀俱楽部の面々が前夜祭だと大宴会の最中だ。誘われるままに遠慮もなく宴席に着き、遅れを取り戻そうと注がれるままに杯を重ねる。そのうちに同じ鳥取県内の山岳会「岳獅会」のメンバーも合流してさらに盛り上がってくる。
このままだとオールナイトになりそうで明日の計画が危うくなる。もはや酒量の制御は困難でせめて時間でセーブしようと10時までと決めて立ち上がる…多少は大人になったかな?
晴れの予報は外れて朝から雨。雨雲レーダーを眺めるもどうも止みそうもない。半日かけて来て酒を飲んで終わりはあまりにももったいない。そのうち快復すると期待して雨の中を出発。終始ガスの中で視界ゼロ。稜線に出たとたん風も強い。
2時間と少々でユートピア避難小屋に着くが意気消沈。先を断念して引き返すが同じ道をたどるのはいただけないと、ちょっと危うく万人向けでない上宝珠から砂滑りのザレた急斜面を駆け下る。ようやく傾斜も緩くなったところで立ち止まった時ガスが切れて荒々しい大山北壁が姿を現した。
モノトーンの幻想的な一瞬のご褒美だ。「やっぱり山はいい!」次回は天気だといいね。

ベアリングの交換修理:結局四日間作業を中断することになり予定は大狂いだ。まさに負のスパイラルに巻き込まれている

小屋に着いた時には登攀俱楽部の面々が前夜祭だと大宴会の最中だ

一瞬ガスが切れて荒々しい大山北壁が姿を現した…やっぱり山はいい
