コラム・エッセイ
有朋自遠方来不亦楽乎2024笠戸の旅②
おじさんも頑張る!~山の話あれこれ~ 吉安輝修今回の笠戸島縦走計画を立てるにあたり、せっかくだから島の端から端までの全山縦走という案もあった。メンバーの力量からして不足はないだろうが、何せ時間が限られる。幸いなことに笠戸島の縦走路は何か所も登山口が整備されているので時間や体力に合わせてアレンジできるし、路線バスが日に何本か走っているのでタイミングが合えば下山後にバスに乗って出発地まで戻れるのも良い。そんな臨機応変に対応できるのが笠戸島縦走の魅力かもしれない。
主稜線上は頭上を覆うように灌木が密生していて、直射日光を遮ってくれるのは有難いが防風林にもなるので暑い日にはもうちょっと風が欲しい。数か所の展望地は瀬戸内ならではの絶景が楽しめるが日差しに参って木陰に逃げ込む。
午後からはますます気温も上がり、次々に現れる数十メートルの小ピークを越える度に大汗を流す。もちろんこまめに水は飲むが大量の発汗に追いついていかない。新笠戸ドックの寮を横目に歩きながら、このすぐ先にはコンビニがあって冷たい飲み物が待っているぞ。このまま下るか…などと冗談とも本気ともとれるような会話をしながら挫折はしないと強がって先に進む。
それにしても暑い。いくら日陰とはいえ気温はますます上がり、小ピーク一つを登り返すのさえ苦行となった。急坂に足がつりそうだと脱水の兆候もあり、やむなく下山を選択し直近の下山ルートを目指す。先頭の高橋ガイドがスマホの地図アプリで現在地を確認。この尾根の道を辿れば下山できると後に続く。そのうちに道が消えヤブの中を難渋するようになった。
最後尾で紙の地形図とコンパスで進行方向を確認するが方角は確かに合致しているし、途中に赤テープやガラス瓶もあった。さらに下ると農地跡も出てきた。それにしてもこのルートは荒れているな…。
結論から言おう。明らかに道迷いだ。原因はスマホの地図画面を拡大しすぎて現在地の思い違いがあったのと、紙の地図で視界が悪く現在地が確認できないときは、明らかに現在地が特定できる山頂や人工物を起点にピークや谷を数え、さらに進行方向や高度などを総合して判断するという地図読みの大原則を怠ったことにあり大いに反省する。が、久々に山歩きの原点に立ち返ることができた。
かつては案内書もなく情報が極端に少ない地方の山野を歩くには、地形図とコンパスを頼りに五感を研ぎ澄まして周囲を緊張して確認するしかなかった。便利さに流されてつい忘れかけていた山歩きの醍醐味を思い出した。
引き受け側としては遠路来てくれた「米子登攀俱楽部」のメンバーにはちょっぴり申し訳ない気もするけどね。夜は予定通りの大交流会開催だが、当然話題は笠戸島の山中をさまよったことや山の四方山話で大いに盛り上がり、勢いで来年は笠戸島縦走のリベンジだ~。頭の隅では「有朋自遠方来不亦楽乎」と遠路こんな地まで足を運んでくれる「友」が有り難い。

縦走路途中の展望地は瀬戸内の絶景が眺められる。でも暑い

下山を始めたが道があやしくなってきた。どうもおかしい

恒例の交流会:来年は笠戸島縦走のリベンジだ!
