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経済 : 周南市のニュース
[この人に聞く]東ソー㈱取締役常務執行役員南陽事業所長 𠮷水昭広さん(59)
経済周南市高付加価値と脱炭素、両面で投資加速
地域の安定雇用も継続
周南市開成町の東ソー㈱南陽事業所長に6月、新しく𠮷水昭広さんが着任した。需要拡大が見込める臭素のプラント増強、二酸化炭素(CO2)の排出量削減に向けたバイオマス発電所の建設など、同事業所では事業拡大と環境保全の両面から積極的な投資が進む。同事業所の現状と将来を聞いた。(聞き手・山根正)
―南陽事業所での勤務が長いそうですね。
𠮷水 1986年に入社してジルコニアの開発部署に配属され約7年いました。ソーダ製造部に移ってからは無機課と電解課でスタッフと課長、2012年から5年間ソーダ製造部長を務めました。東京本社、四日市事業所を経て6年ぶりに戻ってきましたが、人生のほぼ半分、約30年を南陽事業所で過ごしています。
―事業所のかじ取りをする立場として、改めて意気込みをお聞かせください。
𠮷水 化学プラントなので安全安定操業を何よりも最優先し、継続的な成長投資とカーボンニュートラルをうまくバランスさせ、明るく安全安心で、収益力豊かな事業所としてさらなる発展を目指します。
―これまでの仕事で特に印象に残っていることはありますか。
𠮷水 最初に配属されたジルコニアの部署は、新規事業で、自社での研究開発、プラントの建設稼働後の製品化、顧客評価を反映した新グレード開発などの一連の業務に携わり、会社員としての第一歩を教えてもらいました。現在は、歯科材料や産業機器材料などに広く使われ、生産能力は当時の30倍ほどに成長しています。
―南陽事業所では設備投資が続いています。
𠮷水 電子基板の難燃剤などに使われる臭素は100億円を投じて製造設備の能力を増強し、昨年末から稼働しています。医薬品の分離精製剤プラントも供給量増加のため160億円を投資し、2025年春の商業運転を見込んでいます。自動車のホースや接着剤などに使われるクロロプレンゴムも、既に生産能力増強投資をしましたが、需要拡大に応じるため、現在、製造ラインの追加建設を検討しています。
―いずれも付加価値の高い高機能材料であるスペシャリティ事業ですね。
𠮷水 塩ビなどの汎用品、いわゆるコモディティ事業は、ロシアのウクライナ侵攻による石炭価格の高騰、中国の需要回復の遅れなどで収益改善が鈍くなっています。収益基盤を強固にするため、2022年度決算で650億円だったスペシャリティ事業の営業利益を、2030年までに1千億円に引き上げます。
―一方で、地球温暖化防止を目的とした二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルへの取り組みも待ったなしです。
𠮷水 当社のCO2排出量は現在、年間760万トンですが、2030年までに230万トン、約30%を削減する計画です。木質ペレットなどのバイオマス燃料を主に使う自家発電所の建設が7月に始まりました。事業費は400億円で2026年4月に運転開始の予定です。石炭との混焼割合を上げながらCO2の排出量の削減を進めます。
―周南コンビナートでは今後、出光興産の既存タンクや輸送設備を活用したアンモニア燃料の供給網整備が進められます。
𠮷水 アンモニアも自家発電所の石炭ボイラーで混焼します。周南コンビナート各社様と協力して、行政のご支援も頂きながら、アンモニアの利用も進めて行きたいと考えています。
―仕事をする上で大切にしていることはありますか。
𠮷水 当社の価値観である東ソースピリットに、「挑戦する意欲」、「冷たい状況認識」、「熱い対応」、「持続する意志」、「協力と感謝」の5つがあります。南陽事業所は現在2,500人以上が働き、各部門の様々な人が力を合わせることで安全、安定稼働が達成できています。そういう意味では「協力と感謝」が一番好きな言葉です。
―周南市への思いをお聞かせください。
𠮷水 安定した事業運営が、地域経済や雇用などの好循環につながると考えます。今年度は一般職、総合職合わせて104名が入社しました。来年度も同程度を採用する予定で、今後も地域の雇用確保に貢献し続けていきたいと考えています。また、夏祭りへの参加、公園や道路の清掃、夏休み子ども劇場の主催などの地域活動を通じ、少しでも周南市のお役に立てればと思っています。
―ご自宅も周南市ですね。
𠮷水 はい。これまで単身生活が長かったので、おいしい料理で明るく元気に支えてくれる妻に感謝しています。

𠮷水昭広さんプロフィール
1964年、大分県国東市生まれ。東京農工大工学部工業化学科卒業。1986年に旧東洋曹達工業に入社し、南陽事業所ソーダ製造部長、生産技術部長、四日市事業所長などを歴任。趣味は水泳とスロージョギング、ゴルフ。家族は妻と社会人の息子2人。