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経済 : 周南市のニュース
[この人に聞く]出光興産㈱執行役員徳山事業所長 太田 義彦さん(57)
経済周南市構造改革先導のスピリッツ バイオ発電、アンモニア、航空燃料(SAF)
2014年に石油精製機能を停止した徳山事業所だが、バイオマス燃料の発電所ができ、アンモニア燃料や、廃食用油を原料とした航空燃料SAFの製造拠点としての整備が検討されている。昨年7月に事業所長に就任した太田氏に徳山事業所の現状と、今後の意気込みを聞いた。
─ バイオマス発電所ができ、アンモニア燃料や、廃食用油を原料とした航空燃料SAFの製造拠点として今後、出光興産の中核となるのではと期待が高まっています。
太田 まさにその通りで、徳山事業所は出光興産の中の構造改革を常に先導してきて、最初の製油所もここですし、最初の石油化学もここですし、バイオマスにもトライしています。構造改革を主導してきた、そういったパイオニア的な気概というかモチベーションが高いですね。徳山事業所のパイオニアスピリッツ。これを大事にすればいろんなことにチャレンジしていけると思っています。
─ バイオマス発電所に続いてアンモニア燃料なども具体化されつつありますね。
太田 アンモニア燃料はアンモニアの調達、受け入れ基地、皆様に届けるパイプラインを引くなどそれぞれのフェーズがありますが、それぞれで検討が進んでいます。
調達は三菱商事さんと組んで米国のエクソンモービルとの事業を進め、こちらではタンクの転用やパイプライン敷設について今、検討しています。安全性も有識者会議で評価してもらっていて、検討結果を踏まえてこれからいよいよ本格的な設計にはいります。2030年に年間100万トンの供給に向けて順調に進んでいます。
─ 航空燃料(SAF)も含め、設備投資も必要になってきそうですね。
太田 一部、石油精製の装置を転用し、タンク類も既存のものを使いますが、メインの精製装置のところは新設しないといけないですね。
─ 社員のやる気が大切ですね。
太田 2014年に石油精製が止まった直後から、いろんなことでチャレンジしようとやっていて、全従業員が自分たちの設備をどうやっていこうかという意識があります。現地は現地の思いが絶対あるし、そういったものを声にし、形にすることが非常に大事かなと思っています。
─ 座右の銘を教えてください。
太田 一つは「兵は拙速を聞くも未だ巧久なるをみず」というのがあります。これは孫子の兵法の一つで、要は短期決戦の重要性を説いた言葉です。長期戦になって成功した例はありませんと言っています。
それと、これはシェル石油で言われたことで、まず「物事をシンプルにしなさい」という教えです。やっぱりシンプルでないと皆さんに使ってもらえないし、使ってもらわないものは価値を生まないので、仕組みも装置もシンプルにしましょうというのが一つ目。もう一つは「付加価値」というものを考えましょう、ほかと違う付加価値を出すことを大事にしましょうという教えです。
─ 事業所長に就任して半年。従業員に対する接し方はいかがですが。
太田 半年ですからそんなに多くは変えられないのですが、複雑なものに対しては、なんでそんなことになっているのか、どういう目的でやっているのか、聴いたりしています。壁を作らず、とにかく話をよく聞くことですね。ざっくばらんに、打ち解け合うようにしています。
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出光興産㈱執行役員徳山事業所長
太田 義彦さん(57)
[プロフィール]
長野県茅野市出身。東京農工大学応用化学科を卒業、1992年に昭和シェル石油に入社。四日市の工場でプロセス技術者として勤務後、2003年に本社の製造部に異動。06年から2年間はオランダのシェル石油の本社「Shell Global Solutions」に勤務。17年4月から昭和シェル石油の製造部長、出光興産との経営統合で19年4月から出光興産の製造技術本部長、21年6月から愛知事業所長、24年7月から徳山事業所長。