2026年07月15日(水)

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DXのリーダーになれる人材育成 「小さい単位が向いている」 周南公立大学福祉情報学部長 木島正明さん(65)

 山口県周南市の徳山大学を周南市立化して4月1日に開学したばかりの周南公立大学。2年後の学部改編では情報科学部の創設も計画されている。その準備の中心になっているのが3月まで4年間、広島大情報科学部の学部長だった木島正明さん。現在は福祉情報学部長を務めているが、金融工学の日本の先駆者の一人でもある木島さんが目指す情報科学部の姿を聞いた。(延安弘行)

 周南公立大学で新学部創設に携わるようになった経緯を教えて下さい。

 木島 4年前、周南公立大の高田隆学長が広島大学の理事・副学長だったころ、私が学部長でいろいろな議論をしていましたが、2年ほど前から誘いがあり、構想段階から携われることに魅力を感じて引き受けました。

 AI、データサイエンスやこれらを包含したDX(デジタルトランスフォーメーション)の教育を学生、社会人に実施することを大学のミッションに掲げています。DXで地方創生につなげる時、広島大では中国ブロックになりますからサイズが大き過ぎて、小さい単位が向いているのではないかと思ったことも要因の一つです。周南市、山口県のサイズがいい感じですね。

 デジタル化で暮らしを変化させ、豊かにするDⅩが注目されています。

 木島 DXは小さなこと、農業や漁業から始めるのが向いているのではないかと思っています。そのためには偏差値秀才である必要はなく、どう興味を持ち、知識と社会をどう関連づけるのかが重要です。STEAM(スチーム)教育ですね。理系に強いだけでなく、アートなど文科系にも理解がある、そういう人材を育てる教育をしたいですね。そのためには学生のモチベーションが重要です。

 モチベーションを高めるためにどういったことに取り組みますか。

 木島 例えば現場で活躍している実務家を教員として雇用して、オンラインでいいので学生が学べるようにしたい。兼業になるでしょうが、ビジネスの第一線の友人や知り合いはたくさんいます。グーグルなどのGAFAでも本当にちょっとした仕掛けから始まっています。ちょっとしたイノベーションの積み重ねから影響力が発揮できるようになることを伝えたい。

 先生が大学に入学したころ、日本はまだ金融工学という分野自体が始まったばかりの時代でした。

 木島 東京工大にできた全国初の理学部情報科学科に入り、勉強する中で日本の大学が物足りなくなって、著書を読んで天才ではないかと思った人が教えている米国の大学に留学したらビジネススクールでした。金融経済を学び、応用、数理的な分析が自分に合っていると思いました。

 日本に帰るとファイナンスやマーケティングサイエンスは本もないので私自身で書きました。社会人大学院が日本でもたくさんできる時期で、銀行、メガバンクの行員を対象に教えるようになりました。修士論文を書くわけですが、自分たちが困っていることをテーマにします。学生から教えてもらったテーマも研究しました。 

 そのころから金融の実務面でも研究成果を生かすようになりました。

 木島 ビジネススクールで学生から問題を教えてもらったことが物価連動債やコア預金モデルの研究に結びつきました。直接、助言を求められることもあり、財務省からの依頼で40年国債発行の時に国債のプライシングモデルを開発しました。

 新大学の教育について具体的に教えて下さい。

 木島 スチーム教育によって将来的に新しいものを作り出せる、リーダーシップを兼ねた人材を育てたい。4年間だけでなく、最初の学生が卒業するころに大学院を用意し、6年間かけて教育したい。一人ではできない、チームでやる仕事なので、誰がどういう能力を持っているか見極めて、チームの構成などもできる人材が求められます。

 徳山大時代から力を入れているEQトレーニングや、インターンシップも大切になります。

 木島 EQトレーイングは繰り返しやることで効果があがると思います。インターンシップも重要で、世界で一番のカナダのコンピューターサイエンスの大学で、3年生になったら半年間、インターンに行って自分の足りない部分を見つけて大学で半年間学び、またインターンに行って卒業するというシステムがあります。理想的な産学連携を目指します。

 DXというとまだ身近になっていないこともあります。

 木島 データ解析というとかっこよく聞こえますが、実際は死にものぐるいで血の汗を流しながら膨大なデータと格闘し、経験や知識を総動員して取り組むのがデータサイエンスです。そのことを知ってほしい。

 地域に対しては早くDXセンターを作ってセミナーやシンポジウムを開き、何を目指しているのか、地域の人に知ってもらいたいと思います。

 何を学ぶのか、目的意識を持って入学して来ることが大切です。

 木島 高大連携を使って高校に出かけて高校生に役立つようにしたい。必修単位は50%ぐらいに抑えて、2年間、基礎を学んだあとは例えばDXの農業分野での応用など、自分でカリキュラムを作って学べるようにもしていきたいですね。

 お話をうかがっているとこれからの情報社会をリードする人材を育てることができそうですね。今日はありがとうございました。

木島 正明さんプロフィール

 新潟県出身。専門は金融工学。東京工大理学部情報科学科を卒業、同大大学院理工学研究科博士課程修了(理学博士)、米国のロチェスター大経営大学院博士課程修了(学術博士)。東京工大理学部助手、筑波大社会工学系助教授、東京都立大経済学部教授、京都大大学院経済学研究科教授、首都大東京社会科学研究科教授を経て2018年から広島大学情報科学部長、22年4月から周南公立大学福祉情報学部長。広島大学時代に続いて単身赴任。

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