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地域 : 周南市のニュース
【周南】手動開閉式の「踏切ゲート」で安全に JR西日本・通行人の左右確認促す
地域周南市遮断機や警報機のない踏切の安全確保に、JR西日本が開発した手押し開閉式の踏切安全装置「踏切ゲート」が活躍している。2020年に2人が死亡する事故が起きた光市上島田の山陽本線八王子第2踏切にも設置されており、横断者の安全を確保している。
(山上達也)
事故多発の「第4種踏切」は山口県が全国最多
踏切は警報機や遮断機がある第1種踏切▽警報機だけの第3種踏切▽警報機も遮断機もない第4種踏切に分類される。手動と自動の切り替え式遮断機だった第2種踏切は1985年以降、なくなった。
県内にある892カ所の踏切のうち、踏切ゲートを含む第4種踏切は全国最多の136カ所を占めており、最も事故が起きやすいのが第4種踏切だ。
光市の第4種踏切、八王子第2踏切で2020年10月18日午後3時30分ごろ、近くに住む83歳と59歳の母と娘が線路内に入り、貨物列車にはねられて死亡する事故が起きた。
事故の再発防止へJR西日本は、信号保安装置メーカーと共同開発した踏切ゲートをこの踏切に設置。以後、事故は起きていない。
周南地域ではほかに、周南市戸田の山陽本線の戸田駅 ― 富海駅間に踏切ゲートを設置した踏切が2カ所ある。
通行人の一時停止、左右確認で事故防止
踏切ゲートは高さ1.1メートルの支柱に、発泡スチロールを加工した長さ1.8メートルのバーを取り付けたもので、オレンジの蛍光色でよく目立つ。バーは手で押し開け、数秒後に支柱内のバネの力で自動的に閉まる仕組み。
水平方向に開閉するバーのため、通行人の一時停止や左右確認を促し、事故発生を防いでいる。
国の運輸安全委員会は第4種踏切の廃止や保安装置の充実を鉄道事業者に求めており、JR西日本は利用者が少ない踏切に設置を進めている。
地域に根付いた踏切に「踏切バー」設置
周南市戸田には清六迫(せいろくさこ)第2踏切▽上為政(かみためまさ)踏切に踏切ゲートがある。市道沿いにある清六迫第2踏切は、踏切を渡った先の民家にとって唯一の市道との連絡道。上為政踏切は田んぼに行き来するトラクターやコンバインなど農業機械の通行が主な用途だ。
清六迫第2踏切の近くに住む女性は「昔はうちの奥にある家の人もこの踏切を使っていたが、最近は我が家と来訪者が使うだけ。暮らしになくてはならない踏切なので、ゲートがついてから安心している」と話す。
上為政踏切のすぐ隣は踏切と同じ名前の為政節子さん(82)の自宅があり「このあたりは為政という地名で、たまたま地名とうちの名字が同じだけ。昔は無理な渡り方で列車が止まったケースがあったが、このバーができてその心配はなくなった」と話している。
「安全な踏切」で暮らしと産業を守ろう
踏切ゲートの設置費用は安く、工事期間も短くてすむのが特徴。踏切は道路と鉄道という異なる交通手段の交差部分で、人や車の円滑な移動を確保する重要な役割があり、これは今後も鉄道がある限り不変だろう。
踏切の安全確保こそ暮らしや産業を守る最前線にあることを、私たちは今一度、認識すべきではないか。
