2026年06月02日(火)

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記者レポート : 周南市のニュース

地域の基幹病院として感染症にも 「断らない医療」継続 JCHO徳山中央病院院長 沼 文隆さん(65) 

 周南地域の医療の中核として新型コロナウイルス(COVID-19)感染者の治療でも大きな役割を果たしている周南市のJCHO(地域医療機能推進機構)徳山中央病院。そのトップに今年4月に就任した沼文隆院長に同病院の現状とこれからを聞いた。
(聞き手・延安弘行)


 ――医師をめざしたきっかけを教えて下さい。

 沼 医歯系の道に進むことがかなわなかった父は、小さい頃から私に医師になることを強く勧めていました。物心がつく頃には自分自身もその気になり、医師という職業にだんだんと魅力を感じはじめ、そのまま突き進みました。

 ――就任にあたっての抱負をお願いします。

 沼 東日本大震災と福島第一原発事故からの復興は未だ道半ばとはいえ前進がみられていた矢先に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界を席巻し、依然として猖獗(しょうけつ)を極めています。国内外ともに先の読みにくいこの混迷の時代に院長になり、身の引き締まる思いです。

 ――感染症拠点病院として新型コロナウイルス感染者治療に取り組んでいますね。

 沼 平成26年4月に社会保険病院から独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)への改組もありましたが、周南地域における当院の役割はなんら変化することなく継続されてきています。現在はCOVID-19対策と、当院の真骨頂ともいうべき救急医療・専門医療の2正面対応を行っておりますが、COVID-19もいつかは収束するはずです。

 近い将来、深刻な人口減少、少子高齢化などの医療環境の変化が加速化し、求められる医療も変化することが予測されます。しかし、当院は周南医療圏の高度急性期、急性期医療を担う基幹病院として、今後もその役割を果たすべく切磋琢磨していく所存ですので、皆様のご理解とご支援の程よろしくお願い申し上げます。

 ――これまでの仕事で印象に残っていること、誇りに思っていることは何でしょうか。

 沼 当院に着任前は山口大学で婦人科腫瘍学を中心に教育、研究、診療に従事していました。その間、米国ミシガン大学病理学教室に留学し、癌(がん)の浸潤・転移に関連する接着分子の発現と癌の悪性度に関する研究を行い、またMDアンダーソン癌センターで研修する機会を得ました。

 臨床では婦人科癌手術、化学療法等を積極的に行っていましたが、平成15年に当院の前身である社会保険病院に主任部長として着任して、当時副院長であった伊東武久先生(現緩和ケア内科主任部長)に低侵襲手術として内視鏡手術と膣式手術を徹底的に鍛えてもらいました。

 当時は毎日のように夜遅くまで手術しておりましたが、全然苦痛ではありませんでした。良い思い出です。

 ――産婦人科医として実績を積み上げてきたわけですね。

 沼 その後も多くの産婦人科手術に携わり、子宮頸がんの初期から早期浸潤癌の妊孕(にんよう)能温存手術にも積極的に取り組みました。こうした温存手術後にご本人が無病健在なことは我々にとってもちろん喜びでありますが、さらに妊娠し無事出産され、母児ともに経過良好であることは産婦人科医冥利に尽きます。

 内視鏡手術はさらに発展し、現在子宮体癌に対する腹腔鏡下手術も多数例行っており、頼もしい後進が育ってきているのもうれしい限りです。

 ――座右の銘、大切にしていることをお願いします。

 沼 人生には不如意なことが多いものです。どうしようもないことがあったり、うまくいかなかったり、失意の時でも「くじけない」「へこたれんぞ」「never give up」といった気概でやってきましたし、これからも乗り越えていきたいと思っています。好きな言葉はいくつかありますが、その中でもデール・カーネギー著書のタイトルでもある「道は開ける」は特に好きな言葉です。


■院内感染に備え、事業継続計画

 ――徳山中央病院は県東部(周南地域)で重要な役割を果たしています。

 沼 当院は山口県東部に位置し、高度急性期を担う519床の地域支援病院です。救命救急センターを有し、1次から3次救急まで年間約5千件の救急車搬送を受け入れ、住民の皆様が安心して暮らせる地域づくりのため、「断らない医療」をモットーにしています。ちなみに令和2年度の救急搬送応需率は96.4%でした。

 ――新型コロナウイルス感染拡大への対応を教えて下さい。

 沼 感染症指定病院としても12床の感染病床を保有し、周南医療圏、柳井医療圏、岩国医療圏の感染症患者様をお預かりする責任を有しているため、昨年当初より、院内ICT(Infection Control Team:感染制御チーム)および感染管理認定看護師3名が主体となりCOVID-19受け入れ体制整備を行いました。同時に新型コロナ院内対策委員会を立ち上げ、重症患者に備え人工呼吸器対応、透析患者や妊婦への対応もできる体制を整備し、ECMO対応は山口大学病院と連携することとなりました。

 そして、ご存じの通り、昨年来多くのCOVID-19患者様の受入を行ってきました。どのようにしてCOVID-19患者様を受け入れながら急性期病院としての役割を果たしていくか?一般外来に来院される発熱患者様に対するトリアージの強化、救急外来では、COVID-19感染疑いがあれば隔離ゾーンでの感染防護対策をとりながらの診療、またCOVID-19感染疑いで入院治療が必要な方を収容するゾーン分けした病床確保を行いました。

 しかしながら、無症状感染者がいるため水際対策だけでは院内感染を封じ込めることはできないと判断し、事業継続計画(BCP)を策定しました。BCPはCOVID-19感染の疑いがある患者様の院内発生報告から発動し、感染が確認されたら、速やかな濃厚接触者調査・確定と迅速なPCR検査へと進みます。さらにBCPには汚染エリアの評価や消毒等の対応、残存診療機能の評価、院内感染拡大を最小限にとどめる方策、診療再開への対応を決定するための手順が示されています。

 ――実際に院内感染も発生しました。

 沼 晴天の霹靂(へきれき)で、なんとBCP策定直後の昨年5月3日に2例の患者様の院内感染が発生しました。策定BCPも役に立ち、また山口県及び周南環境保健所のご尽力のお蔭で、6日までに入院患者様、当院職員等のPCR検査を迅速に実施することができ、職員及びその濃厚接触者等もPCR検査陰性と判定され、連休明けには病院を正常通り診療継続することが可能となりました。

 この原稿を書いている現在、山口県ではCOVID-19第4波は沈静化してきていますが、COVID-19患者様受け入れと急性期病院としての役割を果たすという2正面対応には多大な時間と人員を要します。

 この約1年半、全職員の懸命の努力により、COVID-19対策を行いながら、一般外来、入院治療、手術、休日夜間の救急外来等、病院の機能を中断することなく維持することが出来ております。私は19年間当院に勤務していますが、こうした有事における職員の結束力の強さは当院最大の強みと思ってます。

 また、治療最前線で自らも感染のリスクにさらされながらも、当然のごとく日々診療に従事している職員のその強い責任感や使命感には敬服するとともに誇りにも思います。一時風評被害もありましたが、一方、こうした現状に理解を示してくださった多くの方から心温まるご支援ご声援を頂いたことは、大変励みになりました。誠に有難く感謝申し上げます。この場をお借りしてお礼を申し上げます。


■災害に強い新棟建設に着工

 ――徳山中央病院の進行中の計画を教えてください。

 沼 当院は1946年に社会保険病院として設立されて以来、今年で75周年を迎えます。76年に現在地に移転してから、建物の増改築を繰り返してきましたが、今では多くの部署、セクションが老朽化の問題を抱えたままとなっています。

 特に西館は、現在の耐震基準を満たしていないため、早急な対処の必要性を指摘されていました。当初は耐震補強工事を予定していましたが、完成後の建物の耐用年数および費用対効果を考慮して建て替え工事の運びとなりました。今年はいよいよ新棟建設工事に着工します。

 何分にも当院の敷地面積が狭いため一括での工事はできません。建設、移動、解体、建設等工期を分けていく必要があります。また、診療しながらの建築ですので、これから何かと皆さまにはご不便をおかけすることになるかと思いますが、何卒ご理解・ご支援のほど宜しくお願い申し上げます。

 ――今後のあり方・構想を教えて下さい。

 沼 今まで述べてきたことと重複しますが、当院は地域医療支援病院、救命救急センター、災害医療センター、地域周産期母子医療センター、小児救急医療拠点病院、へき地医療拠点病院、がん診療連携拠点病院、がんゲノム医療連携病院として5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)5事業(救急医療、災害時における医療、へき地医療、周産期医療及び小児医療)に取り組んでおりますが、さらに地域医療に貢献できる準備を進めています。具体的には

 ①新しい乳がんの専門医、指導医の赴任により新たに〝乳腺外科〟を立ち上げました。

 ②がんゲノム医療連携病院の指定を受け、がんゲノム診療を実践しています。また遺伝子診療科も新設し、遺伝カウンセリングを行っています。

 ③内視鏡手術の増加に対応できるように〝内視鏡専用手術室〟を増設しました。またロボットを用いた〝ダビンチ手術〟の適応を拡大し、前立腺癌だけでなく、腎癌、直腸癌の手術を開始しています。

 ④がん診療連携拠点病院として新しい放射線治療専門医の赴任を受け、従来からの念願であった腫瘍制御率の向上や、合併症の軽減が期待できる強度変調放射線治療(IMRT)も開始しています。

 ⑤災害拠点病院の役割を果たすべく、災害時も地域の医療を守る、〝災害に強い新棟〟の建設工事を始めます。 2025年初頭の開院を予定しています。

 ⑥看護師がその役割をさらに発揮できるように看護師の〝特定行為研修〟の強化、特定行為研修修了者の活用及び認定看護師の育成にも励んでいます。

 今後もCOVID-19との闘いが続く中、最大限の感染予防策を講じつつ、救急医療・専門医療に注力し、地域住民の方々により高度で安全な医療を提供できるように、職員一丸となって努力してまいります。

 ――周南地域の今後についていかがですか。

 沼 COVID-19で傷んだ飲食店をはじめとした街中が心配です。以前のような活気が早くもどることを期待しています。

 また、人口減少には男女ともに独身者の増加という現実があり、ベースには男女の良い出会いのための機会が少ないこともあると思います。機会支援等自治体にもサポートしてもらって取り組むことも必要ではないでしょうか?医療に関しては当院は高度急性期・急性期医療を担いますので後方支援病院とのより緊密な連携が重要と考えております。

 徳山大学公立化については、その中でのさまざまの構想を熟知しておりませんので、ノーコメントです。

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