コラム「一言進言」
3セクの問題浮き彫りに
~財団同士の交流を~
■ 周南市文化振興財団の不祥事は全国的なニュースになり、世間を驚かせた。送検され裁判も始まったが書類偽造も認め、ネコババも認めているので長く争われることはないだろう。会計担当より業務担当の方は、文化会館でもしょっちゅう顔を合わせ、わが社の行事の時などはまことに親切で「良く気の利く人だなあ」ぐらいしか覚えていない。夜の街でも出会うこともあったが、おとなしく控えめな遊び方だった。
■ 1億4千万円あまりの着服の疑惑が持たれているが、およそ20年間の犯行で、公認会計士の監査もすりぬける巧妙さには周囲もさすがにショックだろう。銀行でも保険会社でもたまに発生しているが、弱い人間はどこにでもいるようだ。行政が絡むから話はややこしい。そこに多額の税金が関与しているから、普通の会社内の不祥事では終わらない。
■ 文化振興財団には多額の業務委託料や補助金が支払われてきた。市が出資する第3セクターの難しいところで、トップはいつも自治体の長でもある市長だ。平成4年、下関市が主体となって作った日韓高速船事業が破綻した。時の下関市長は住民から損害賠償をと住民訴訟を提起された。一審の地裁では8億円余りの市からの支出を全額払えと、二審の高裁では3億8千万円を払えと判決が出た。
■ 結局最高裁で何とか支払いを回避できたが、最高裁の中でも市長に弁済義務があるとの意見も裁判官の中にあった。旧徳山市でも徳山駅ビルは株式会社として3セクで経営していた。解散するときは確か2億円ぐらいの累積赤字があった。社長は小川亮徳山市長だったが、解散前に助役を社長に代え、出資者が地元企業だったから2億円の出資金の返済を免除してもらい、赤字倒産状態でも問題が起こらなかった。
■ 3セクの課題は大きい。全国の地方自治体で3セクの破綻が問題になっている。理事長などは市長が就任するが、現場のトップ、専務理事などは役所本体からの天下りが多い。先述のごとく責任はトップの市長に向くこともある。5年前、周南市では市内の3セクに対する経営評価特別委員会が開かれた。公認会計士など3人の委員で検討された。結論的には「ふるさと振興財団、文化振興財団、体育協会の3団体が連携して推進すべき」が改善策だった。
■ 1人の経理担当者に20年にわたりお金の管理を任せることは、公共の団体ではありえない。提言のように人的交流も含めて連携していたらと思わざるを得ない。先の改善策は検討された痕跡がない。3セクで働く職員たちを見てきたが、本庁の職員もびっくりするぐらい熱心で、夢を持っている。今回のことで3セクで頑張る人たちが落ち込まないよう、本庁職員の対応も大切だ。
(中島 進)
