2026年07月09日(木)

コラム「一言進言」

テレジン収容所の残した4000枚の絵

~描き残した絵を今一度見てみたい~

アウシュヴィッツを知っている子供が激減した。ナチスによるユダヤ人大虐殺施設で600万人とも650万人ともいわれるユダヤ人を強制収容して虐殺した施設だった。そのうち子どもは150万人とも言われている。ましてやチェコにあった子どもだけを収容していたテレジン収容所はほとんど知られていない。テレジン収容所には1万5,000人の子どもが収容され、生き残ったのは100人足らずだった。

テレジン収容所の子どもたちが残した絵が4,000枚あった。絶望的な収容所の中で一人の絵の先生が何とか頼んで子どもたちに「楽しかったことを思い出して絵を描こう」と言って描き残された絵がそうだ。子どもたちの多くは絵を残してアウシュヴィッツに送られた。その残された絵の展覧会を日本で始めたのが作家の野村路子さんだ。

30年以上前、徳山商工会議所青年部の一員だった私は仲間に声をかけ、徳山でそのテレジン収容所に残った子どもたちの絵の展覧会を開催しようと動いた。「なんで会議所がそんなことするんだ」反対の声も大きかったが何とか開催に漕ぎつけた。しかし、反対した人たちからも「良かった!現実が知れて」と声が上がったのが何よりだった。

収容所の薄い隙間から見た煙突の絵。そこには人を焼いているだろう煙が立ち昇っている。収容前の家族との手をつないだ思い出の絵。ちょうちょや花の思い出の絵。胸の痛さを抑えながらの鑑賞になった。数えきれない子どもたちが大人たちの欲望のエサのように命を絶っていった。

それだけのひどい仕打ちを受けたはずのユダヤ人たちは今、ガザの病院で横たわっているパレスチナの子どもたちも容赦なく殺害している。なんとゆう輪廻(りんね)か。これが人間のどうしようもない所業というのか。世界中の人があれだけ悲しみ、怒りを覚えた仕打ちを、今ウクライナでもパレスチナでも繰り返している。

かつてのベトナム戦争当時、世界で沸き起こった「戦争反対!」の声が今の時代は聞こえない。なぜなんだろうか。この日本でも反戦歌を若者が歌わない。桑田佳祐さんやチャー、野口五郎さんなどが歌った「時代遅れのロックンロールバンド」ぐらいしか聞かない。この無関心さはひどい。マスコミも淡々とニュースで流すが、そこに女性や子どもたちへの想いが伝わらない。「戦争を知らない子どもたち」は戦争に関心も持たない。

青春時代、ボブディランの「風に吹かれて」を聞いて育った私たちにはもう歌う力もなくなった。せめて今の若者たちに、テレジン収容所で子どもたちが描いた絵を見れる展覧会をもう一度開いて欲しいものだ。

(中島 

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