コラム・エッセイ
№39 ビッグモーター社の転落に思う→急成長企業に欠けていたものは何か、そこから学ぶものは何か
独善・独言 ビッグモーター社の問題の一応の決着を受け、銀行勤務の経験からくる私見を6点述べたい。
㊀急成長企業のひずみを何社もみた。その弱点は何か…ひとつは成長速度に内部統制システムが追いつかないという点である。
“多数決ではイノベーションは生まれない”という格言がある。創業者兼重元社長はたぐいまれなカリスマパワーで同社を同業トップ企業に育てあげた。しかし、その規模に見合う体制作りができていたのだろうか。もちろんまったく手をこまねいていたわけではあるまい。細かく規定の整備を進めた。働きやすい職場環境づくりにも努めた。また、外部コンサルの導入もはかったであろう。しかし、その対応は急成長に追いつかなかったということになろう。
㊁は急成長にともなう人材の確保である。創業来の仲間、兄弟や親戚が主体のスタッフでも、小規模のうちは頭抜けたトップの力量で経営は維持できる。しかし、図体が大きくなるとそうはいかなくなる。新しい血を外部から導入すると既存のスタッフとの間に齟齬(そご)をきたす。経営者は頭を悩ます。
㊂多くの創業二代目をみてきた。二代目の立ち位置は簡単ではない。偉大な創業者にはかなわない、番頭的存在からなにかと煙たい指導がある、従業員からの試すような視線がくる…これらに打ち克とうとすれば行動に無理が生じる、既存の仕組みをむやみに変えていこうとして無用な軋轢が生じる…いわば“二代目病”である。
すべての二代目が例外なくそうであると断定してもよいが、その多くは短期間の間に組織に融和し調和して普通の経営者に脱皮する。ビッグモーター社の副社長のように無理強いが長く続くケースは珍しい。もって生まれた性格もあろうが、もう少し年数が経過すれば経営姿勢に余裕が生じたかもしれないなと同情したくもなる。ともかく、二代目の立ち位置は難しい。
㊃世の中には“ニオイの悪い会社”がある。A表にChatGPTの回答を載せているが、これほど極端でなくても、①効率化の進めすぎで余裕がない、②規律順守が過ぎて妙な緊張感がある、③寄付や社会貢献に関心がない、④社内意見より外部コンサルを重視している、⑤社長が勉強しすぎて浮いている等々不自然な空気を感じるケースがある。ビッグモーター社にもダイハツにも該当するものがありはしないか。私がおつきあいした範囲でも不正、犯罪や粉飾を起こす企業は何か匂うのである。事件として表面化した後「やはりな」との思いに至った事例は何度かある。
㊄このビッグモーター社の内部管理が進まない、二代目と従業員の間がギスギスしている、何かしらニオイの悪さを感じさせる…そんな企業風土に接して、取引銀行や損保会社は違和感を感じることはなかったのか、何かしらの経営アドバイスをしようと試みたケースはなかったのか…不思議な思いになる。不正を手助けした損保会社があったことには“何をか言わんや”との憤懣を感じる。
㊅は同社が嫌った街路樹。私は市議会議員在職中『あった方が良いが、なくても済むことはやめよう』と主張してきた。そのなくても済むもののひとつが街路樹である。ビル群の中の緑が貴重なことは理解するが、山の緑がすぐ近くにあふれ住宅から庭の植木がこぼれて見える県内にあって街路樹の意義はどれほどあろうか。下松市で最近、区画整理事業で誕生した「せせらぎ町」の歩道には「ヤマボウシ」が整然と並ぶ。聞けば事業の補助金を得るには街路樹設置基準の法律に従わざるを得ないとのこと。
街路樹は維持費がかかるし、取り除けば現実に歩道を走る自転車の安全性が高まる。ビッグモーター社が排除した街路樹を何人の人が惜しんだのだろうかと複雑な気持ちでいる。
最後に“冒涜”。50年ゴルファーの私は1万個以上のボールを谷や池に冒涜した…もったいない。
…がどうでしょうか。
| A表:ニオイの悪い企業風土とは | |
|---|---|
| 悪徳な実践や不正行為、無責任なリーダーシップなど企業内に腐敗や不正が蔓延している状況にある。不正会計、汚職、いじめ、性的ハラスメントなどの発生もみられる。 |
