2026年04月15日(水)

コラム・エッセイ

No.113 先祖が暮らしていた土地…毛利家の厚木市、徳川の松平郷、久原房之助翁の下松市…「父祖の地ロマン」

独善・独言

 ㊀2月に神奈川県厚木市で「毛利氏特別展」があり、最終日には徳山毛利14代当主毛利就慶(なりよし)氏の記念講演があった。毛利家は当地で発祥した鎌倉御家人で、後に本拠を安芸吉田に移し、さらに関ヶ原以降長州に転封された。今回は厚木市市制70周年のイベントというが、どのような意思をもって、どのような人物が主導して開催されたのか、また、毛利一族はこの「相模の国毛利の荘」を父祖の地として何代にわたってどうとらえてきたのか…それぞれ猛烈な興味がわく。

 さらに、毛利就慶氏である。戦国と維新という2つの日本史の主役になった毛利一族をメインに、歴史に登場する、あるいは歴史から忘れ去られたできごとや人物、場所があざやかにYouTubeで紹介されている。それも半端ではない、将来の歴史資料にもなりそうに思う。口惜しいことに私は最近までその存在を知らなかった。歴史好きな皆様、ぜひご一覧いただきたい。

 ㊁徳川家の父祖の地、三河松平郷を訪ねたことは110稿で紹介した。幕府はこの家を守る松平家を5,000石程度の旗本として維新まで処遇したらしい。5,000石といえば100人の侍を雇用できる扶持で厚遇したということになる。当地には松平家のお寺も神社もある。家康や吉宗はどんな思いでこの山の奥の奥まで先祖供養のために足を運んだのだろうかという想像は楽しい。

 ㊂父祖の地エピソードその1…関ヶ原の東軍勝利の軍功により筑前の地をさずかった黒田家は、城と城下町を「福岡」と名付けた。これは当家の興隆の出発の地になった=父祖の地の「備前福岡」の名をとったというロマン話しである。

 その2…司馬遼太郎の「功名が辻」にこんな記述がある。『武田家の重臣で四天王といわれた板垣信方の子孫は武田滅亡後土佐山内家に仕官して「乾」姓を名乗った。さらにその子孫乾退助は戊辰戦争の折、土佐藩の隊長になって出陣した。退助は甲府地方を平定する過程で住民慰撫策として「当地が私の父祖の地ですよ」と訴えるために姓を板垣に戻した…板垣退助誕生のオモシロ話しである。

 ㊃私の母親の実家は厚狭毛利に仕えた武家である。この井上家に関して多めの字数を費やす。

 井上家の父祖の地は信濃の国井上郡、現在の須坂市にある。東方の山上にあったという井上城からは眼下に千曲川が流れ、遠くに北アルプスの山々が望まれる。「善光寺平」はいかにも肥沃の地という趣である。

 井上家の先祖の一人が、何かの理由をもって、誰かに誘われて、あるいは守護安芸武田氏に、地頭毛利氏に従って安芸吉田にたどりついたのか何もわかってはいない。ただ、吉田において毛利元就と勢力争いをして敗れていることから、それなりの勢いをもつ一族ではあったであろう。維新以後、あの井上馨や鉄道の父井上勝、毛織物工業の父井上省三など歴史の表舞台に立つ人物も現れている。

 菩提寺の浄運寺が小高い位置に城郭を連想させる威風で建っている。ご住職の話では今でも月に一人の割合で井上家に関りをもつ人物が先祖供養に立ち寄っているという。“父祖地ロマン”を追いかけているのは私だけではなかった。

 ㊄4月17日に日立市で「三市一町の交流会」が開催される。久原房之助および小平浪平ゆかりの小坂町、栃木市、日立市、下松市の関係者が一堂に会し、歴史的背景や資源の共通性、今後の連携の可能性について意見交換を行うことを目的としたもので、昨年1月の品川八芳園(久原翁旧宅)以来2回目の開催になる。私個人は鮎川義介を含めて日鉱、日立、日産などの近代産業の礎を築いた企業人群像を大河ドラマに押しあげたいと思っている。

 ところで久原翁にとっての下松である。久原家に養子にきた翁の父親の実家藤田家は永らく下松在であった。つまり下松は父祖の地なのである。翁が下松を理想の工業都市に選定したのには理由があるのである。

 以上の父祖の地話し…ロマンを感じられませんか。

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