コラム・エッセイ
ひきこもり問題に思うこと
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子コロナウィルス禍でのリモートワーク。私たちの関わっている事業でも必要に応じて取り入れている。目下の対象となっているのは県境を越えての遠距離通勤となっている我がつれ合い。
いつもは受付電話のある職場のデスクで相談に対応するのが仕事だが、リモートワークがもう2カ月近く続いている。電話を取ってなんぼの仕事だから、自宅にいては仕事にならない。
そこで、普段は時間が取れずに手が付けられないでいた調査テーマに取り組んで、せっせとレポートを作成している。今回は今携わっている相談事業の中でも多く扱われるひきこもりについて改めて調査をしたということで、概要を話してくれた。
ひきこもりへの支援がどのように行われているのかがその内容だったが、詳細はおくとして、なるほどと印象に残ったことがあるので紹介してみたい。
8050問題と象徴的に語られるようになったひきこもり問題。かつては若者に関わる問題と受け取られていたが、実際には幅広い年代にわたっていて、本人は50歳代、親は80歳代という事例も珍しいことではないことを示す言葉だ。期間が数十年にわたっている例も少なくはない。
さて、その話の1つはひきこもりの起こる時期について。病的な原因によるものを除けばその時期は大きく3つに分けられて、義務教育時代の不登校、高校・大学への進学および就業期の周囲環境(主に人間関係)への不適応、そして定年退職期で迎えた生活環境一変、ということだそうだ。
一般には、不登校のさきにあるものがひきこもりという印象が強いようだが、決してそうではないという。そして2つ目は問題への対応の仕方。
ひきこもり者が概数で100万人を超えるという問題の深刻さへの認識が深まったことで、ひきこもり者への社会的支援制度は手厚くなりつつある。
しかし、と我がつれ合いの声はここで大きくなる。ひきこもり問題対応の課題は、ひきこもり者を支援すること(それは大切なことだが)だけではない。引きこもりが起らないように予防することだ。それがほとんど進んでいないことが深刻さを長引かせている。
そのうち、義務教育期、退職を控えた時期には予防的な対応も試みられているようだが、進学・就職をきっかけに起こる引きこもりについては予防的社会システムはない。これが大きな問題だ。起こってからの対応がいかに大変かはもう十分にわかっている。
ならば是非とも予防のための方策を。病気の治療法の開発は必要だが、病気予防の方策も同様に重要だろう。
マスク配りに400億円以上の国費を費やすなら、せめてその半分を引きこもり予防のために使ってほしいと声を強めた。(カナダ友好協会代表)
