2026年06月24日(水)

コラム・エッセイ

ウクライナ、オミクロン

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 新年を迎え新年度を迎えても、毎日見聞するニュースは新型コロナウイルスで明け、ウイルスで暮れる状態が今年も続き、デルタ株、オミクロン株、B・A2、XEと、誰もがほとんど縁のなかった病理学や免疫学の用語にすっかり親しんだ3年間になっている。

 それに突然加わったのがロシアのウクライナ侵攻と、北海道知床半島での遊覧船の事故。これに急激に進んだ円安と、相も変らず続く北の独裁国のミサイル発射実験を交えてコメントしておけば、テレビコメンテーターは食い扶持に困らないという環境になっている。

 こんないくつかのニュース種の中で馴染みが薄く理解が深まらないのがウクライナ戦争で、なぜ両国が戦争になるのか、他の地域の紛争とどこがどのように違うのか、なぜ日本にウクライナから戦争難民が逃れてくるのか、その背景も十分には理解できていない。大多数の日本人にとってあまり馴染みのないウクライナという国の名が知られたのは、原発事故によってだろう。

 日本では絶対に起こらないと信じ込まされていた原発事故が起るのだということを思い知らされ、馴染みのなかった国名が記憶されたのは36年前のことだが、うたごえ全盛時代に青年期を過ごした我がつれ合いにとっては自分史の古きよき時代を彩る時期に親しんだロシア民謡「一週間」「小さなグミの木」「コサックの子守歌」(これもウクライナの歌なのかどうかは不明)などですぐ思い浮かぶ国名らしい。

 ウクライナという国に特別な縁があるわけではないが、思い出すのはもう20年ばかり前に偶然知り合ったYさんというウクライナの娘さん。美しい顔立ちのバイタリティに溢れた話し好きで、大学ではコンピューター技術を専攻していたとのことで、ようやく広まっていたパソコンの操作方法を丁寧に教えてくれた。

 日常生活のこと、家族・友人達の話色々語り合った彼女やその家族、友人達が今はどうなっているのかわからないが、どうか元気に生き長らえていて欲しいと願うばかりだ。どう考えても侵攻した方が悪いとしか思えないこの戦争。

 いかに強者と言えども「もっと領土と資源が欲しいから武力で攻め倒して我が国のものにするのだ。どうだすごいだろう」と自国民に誇ってもさすがに受け入れられそうにないから「元をたどれば同じ民族のこの国で我が国民が差別され虐げられているから、それをただすために罰として痛い目に遭わせているのだ。これは正義の戦いだ」と胸を張って戦勝記念日のパレードに向かって宣言し、国民の大喝采を浴びたかったというのが本音なのだろうとその胸中を察するばかりだ。

 自分の行為を正義に基づくやむにやまれぬものだと思い込めないと、とても今ウクライナで自分が起こしたことの結果で多くの困難を被っている国民を前に自分の力を誇ることなど許されず、遠からずその座から引きずり下ろされる日が来るだろう。

 その時のためにこの人はどんな表情と言葉を用意しているのだろうか。見たくはないが、興味は尽きない。大国の権力者の思いつきで始まった、くだらぬ戦争とコロナウィルス禍の終息の日が一日も早く訪れることをみんなで祈ろう。

(カナダ友好協会代表)

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