コラム・エッセイ
初夢、正夢
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子三が日も、松の内も、成人の日も、お年玉つき年賀はがきの抽選も終わって、今ごろに初夢の話ではタイミング違いの気がするが、お許しいただこう。
初夢というのは元日の夜に見る夢のことだろうが、では、元日の昼寝で見た夢はというへ理屈はどこかに置くとして、初夢の話。今となっては二日の朝のことだったとはしかとは言いかねるのだが、新年になって見た夢の話。
一昨年の末、初めて身近に触れる機会があったメタバースの世界。予想もしなかった事業化にも携わり、後期高齢者がこんな事をと珍しがられテレビ画面にまで最大の個人情報を晒すことにもなった。関わるほどに面白く、自分たちで作った仮想空間(メタバース)の中で自分の分身(アバター)を自由自在に活動させると一人だけでも楽しめるが、同じ空間に他の多くのアバターと集い、語り交わるのは楽しい。
こんな世界に、周囲との交わりが苦手でひきこもりがちな若者を誘い、お互いのアバター同士でのびのびと語り活動し合える居場所をつくろうと昨年春から仲間と一緒に取り組んでいるが、これがなかなか面白い。
パソコンの中で、まるで宇宙のどこかで発見された星の誰のものでもない大地のように自由に使える自分の空間を決め、家、部屋、町並み、山や海や湖、森、動物たちも自由に作り、その中で自分の好みのスタイル・顔立ち・服装のアバターになって歩いたり、走ったり、空を飛んだり、コーヒーを飲んだり話をしたり踊ったり、時間さえあれば本当に時を忘れて楽しめる。
技術が上がれば、ふと思いついたときに部屋の模様替えをしたり景色を変えることも自由自在にでき、本当に楽しい。何より、余計なお金がかからないのが、いい。こんな楽しみを見つけて年を越した新年に見たのは、まさにメタバース初夢。
新しく模様替えをした部屋にお気に入りのアバターになって入り、こたつでお茶をして外に出ようと思ったらドアにぶつかって出られない。方向を変えようと後や横に進もうとしても思い通りに進めないで慌てているところで途絶えて、終わり。
その話を聞いてわが連れ合い「初夢までメタバースとはもう、虜だな。これなら認知症とも当分縁なく過ごせて、文字通りハッピー・ニュー・イヤー」とのたもう。続けて「私はまだ夢に見るほどメタバースに馴染んではいないが、でも、そのうち夢ではなくなるだろう。メタバースが世界を変える日は必ず来るだろう」「そうかしらね。でも私の周りではまだそれほどでもないよ。一緒に仕事をしている人でも、これがどこまで広がるのか疑問に思うという意見だってあるし」「今はね。しかし40年ちょっと前、インターネットは世界を変えるというキャッチフレーズを聞いたとき、それは何?と思ったが、今はその通りになった。インターネットなしに世界は一日も動かない。まさに世界を変えた。お金の流れに乗る技術は必ず広がる」
私にはまだ初夢の材料だが、メタバースで変えられた世界はどんなものだろう。夢でなく現実となったメタバース世界を自分の目で見られる時が来るだろうか。無理だとは思うが、思うだけでも楽しい。
(カナダ友好協会代表)
