コラム・エッセイ
少子化晩婚説の怪
新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子日本国最大の社会・経済問題と考えられる少子高齢化。社会福祉費増大・税収減少の直接原因で、どこが政権を取ろうとその対策が最大の政治課題となることは明らかだ。
そのうち少子化は今日は目立たなくても明日の国力低下につながることは明らかだから、その原因を明らかにし有効な対策を立てることが防衛費予算を2倍にすることよりも、二酸化炭素排出量をゼロにすることよりも大切だと思う。
一組の夫婦から生まれる子どもが2人未満ならいつかは人口は減っていく。これ(正確には合計特殊出生率)が1.7くらいになったと問題になったのが20年くらい前のことだったと思うが、ごく最近では1.3程度となり、実際人口も減ってきて、危機意識が高まってきている。
大きな政治課題だから政治家がこれについて発言するのは当然のことだが、今度もかの人がとんでもない発言をして世論を賑わしている。自説を言葉をはしょって大向こう受けを狙ったかのように表現し、大抵は「またあの人か。仕方ないな、笑っておこう」と聞き流されることが多かったお方だが、今度はその発言をお笑いの一幕で済ませるわけにはいかない内容だ。
「日本の少子化の原因は女性の晩婚化」というのがこのお方の少子化の原因解析の結論らしいが、統計数字を見た中学生の夏休み自由研究発表ならまだしも、政治問題を解析し政策を考え実行すべき政治家が自分の新発見のように言うことではない。
結婚するのが遅くなれば生まれる子どもの数が少なくなるだろうことは容易に想像されることで、事実緊密な関係があるのだろうが、なぜそうなったのかを考え、対策を立てるのが政治家の使命で、それを果たそうという気概も能力も感じられないで国政を担うことが許されている状況を改善することが、少子化対策に先立つ国政の課題だとも言える。晩婚化がなぜ起こったか。平均寿命が延びたからだと、かの人なら言いそうだが、そうではない。
子育ては家庭づくりの喜びでもあるが、心身の負担でもある。負担感が喜びを上回っていることが晩婚化の原因であることは、その視点に立って調査すればすぐ分かるだろう。
そして負担は現実的には経済問題だ。今日の、将来の生活設計への不安が若い世代に増えているのだ。不安の原因は色々あるが、不安定な雇用制度の蔓延がその最たるもので、二十数年前働き方の多様化の美名の下に派遣労働の範囲を広げる政策を御用学者の甘言に乗って進めてきたことが、晩婚化ひいては少子化の原因だと、かの人に負けず声高に唱えたい。
少子化をもたらす晩婚化を変えたいのなら、派遣労働拡大政策の転換を真剣に考えることが為政者がまずやらねばならぬことだろう。政治への信頼と将来への希望と安心なくして、防衛力増強も財政再建もない。
(カナダ友好協会代表)
