2025年10月02日(木)

コラム・エッセイ

少子化対策

新しい出会いに向けて-この町・あの人・この話- 浅海道子

 年間出生数が予想より15年も早く70万人割れになり、このまま少子化が進めばまもなく日本の人口は1億人以下になると、大きなニュースになっていて、少子化対策を重大テーマと考えた動きが活発になっている。

 出生数の低下と年金制度の話が全国的に盛り上がったのはバブル経済崩壊で日本国中不景気感に沈んでいた頃で、生涯特殊出生率が1.7くらいに低下し、このままでは人口が減り始め、年金制度は維持出来なくなるという話が全国を駆け巡り、政府は火消しに躍起になり、年金制度は100年大丈夫と大見得を切ったが、あれから25年。

 出生数70万人割れが現実になると出生数200万人の世代が心寒くなるのは当然で、心寒い人が多数を占めるとそれに応えずには政権は成り立たないから、少子化対策は与党にも野党にも避けられない大テーマとなる。

 政党幹部に少子化対策を聞く報道番組も増えている。ある党首は出生数を増やすために、結婚しやすく子どもを産み育てやすい環境作りが大切(当たり前でしょう!)として、賃金の向上と家庭向け支援(子ども手当、保育費・教育費補助)の増大、それに社会福祉費用負担の分散(払える者が多く払う)を挙げた。頷けるものもある。これでどうだと満足げな表情で語るこの人、学生時代は学業成績優秀だったのだろう。

 でも、何か違うと感じた。この人、結局問題は金だよね。欲しがるところに金を配れば解決だな、と言っている。確かに給料が高く、子どもの数に応じて手当が付けば結婚も子育てもしやすくなる。

 しかし、一家に子ども4、5人が普通だった時代に生活は豊かだったか?子ども手当はあったか?若い二人が結婚しよう、子どもを沢山育てようとするのは給料が多くて手当があるからだろうか。少子化問題への対応を迫られている政治に国民が求めるのは、今日の豊かさばかりではなく、明日に、将来に、安心して希望を持てる社会を作ることなのではないか。

 人口減の心配などなかった、どう見ても貧しかったあの時代を大勢の子どもが育ったのは、今日よりも明日は良くなると信じることができ、誰もがそうなるのを見て育ったから。今は。人を勝者と敗者とに分け、いつでも首切り出来る不安定な雇用制度を広げ、共に働く人たちを、助け合う仲間でなく、手助けしない敵に変えてしまって改めようとしない。

 今日の給料や手当を増やすよりも、将来に希望と安心を感じることの出来る社会の仕組みづくりに政治が力を示すことの方が大事だと感じる。

 どんな社会で結婚し子どもを育てたいか、折角選挙権を手にした若い人たちが、自分の思いを偽ることなく語り合うことを、かつては世界第2位のGDPを築いてきたと、自負しながらも食い潰したかもしれない世代として、些か後ろめたくも感じながら願っている。

(カナダ友好協会代表)

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